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民医連新聞

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90歳の“夜間”中学生 (13) 仲間と交流し、夢はぐくむ 文・斎藤百合子

 夜間中学と昼間部の生徒との懇談の機会もあった。昼間部は3年生全員が参加。夜間部は都合のついた生徒だけが出席。昼間部の生徒が司会を務め、質問が出される。
「みなさん若そうにないけど何歳から何歳までですか?」
 ―90代から10代までいます。
「その人たちがいっしょに学ぶことは大変でしょうね」
 ―自分で自分の能力に合うと思う教室を選んでいます。
「高齢になってなぜ学ぶのですか?」
 ―中学3年までの義務教育を受ける機会が、主に戦争などで失われていたから。
「勉強は楽しいですか?」
 ―初めてのことが多くて楽しいです。
「試験や宿題は大変でしょう?」
 ―試験や宿題はありません。(「いいなー」の声)
 最後に夜間部から。「夜間部で勉強する人がより良い環境で勉学ができるよう昼間部の人も協力してください」。
 昼間部、夜間部合同の作品展なども、各校で毎年行われている。夜間部の生徒は、昼間は仕事、夜は学習の日々。その合間に仲間たちとの交流があり、未来を見つめてそれぞれの夢をはぐくんでいくのかと想像すると、高齢となった自分の失われた時を惜しむ人も多いことと思う。

■あとに続く世代への贈り物

 大阪府や堺市などの担当者が夜間中学に来て話し合う機会がある。補食の要求などを伝える。補食はパンと牛乳のみで、栄養バランスを考慮した給食には劣る内容。私は、昼間働いて学びに来る生徒がお腹を満たし、栄養もとれるよう、せめて給食と同じ内容にするよう求めた。しかし、その場ではまともな回答は得られず、たいていの場合「上司に伝えます」で終わってしまう。頼りない限りだ。
 堺市内の中学校(昼間部)は、2016年から選択制の給食が実現した。当然、夜間中学も対象になるはずだ。あとに続く世代の学びの環境を確かにしていくことが、去っていく(卒業する)人からの贈り物にと願っていた。
 私にとって安心の場であった夜間中学。失われたものを取り戻し、人間らしく生きたい。「その歳になって」とあざ笑うような友人もいたかもしれない。けれど、年代、環境が違う学友との出会い、出身地も異なる外国人の学友たちとの交流は、大変価値のあることだった。(つづく)


さいとう・ゆりこ
1925年、山梨県生まれ。大阪府在住。健康友の会みみはら会員

(民医連新聞 第1727号 2020年12月7日・21日合併号)