地域とつながり支援につなげる “しあわせ”を届ける場所に 東京・城南グループ
東京の大田区、品川区などで活動する城南保健生協と城南福祉医療協会、城南医薬保健協働の3法人(以下、城南グループ)の有志は、2002年から「よろず(なんでも)相談」を行っています。元職員、城南保健生協の理事、弁護士などが相談に乗り、必要な支援につなげています。また、16年からは子ども食堂を立ち上げ、職員や地域の協力で続けてきました。(代田夏未記者)
「よろずの相談をやってみようよ!」。当時の城南保健生協の理事長の一言から始まった「よろず相談」は、今年で18年目になります。発足当時は週1回だけでしたが、元職員で相談員の前沢淑子さんは「毎日やらないと困っている人に届かない」と、元職員を中心に、大森中診療所で月~土曜日の午前中に行っています。弁護士は月2回、行政書士は月1回、無料で相談に応じています。薬相談と歯科相談は19年からスタート。品川のゆたか診療所でも週2回、よろず相談を実施しています。
■継続できる秘訣は学び
相談内容は、生活苦や家族・知人とのトラブル、労働相談、病気のことなどさまざま。「基本は相手に寄り添い、話を聞くこと」と前沢さん。「ここは悩みの交通整理ができる場所。必要な支援につなげることはできる」と言います。コロナ禍で隣人とのトラブルになり悩む、30代のシングルマザーの相談では、城南グループが行うフードパントリーを紹介し、笑顔が戻りました。
地域の人が「よろず相談」につなげてくれることもあります。長年ホームレス生活をしていた男性が体調を悪くした際、地域の人から「よろず相談に行ってみな」とタクシー代をもらい、傘と杖を両手にやっとの思いで診療所にたどりつきました。すぐに診察して、無料低額診療事業を利用して大田病院へ入院しました。
コロナ禍の影響で、診療所の1階にあった相談場所が発熱外来の待機所になり、3月中旬からは相談も中止に。「診療所でやることに意味がある」とこだわり、7月からは、使用していない診察室で平日の午前中に再開。毎月30人ほどだった相談者は半数ほどに減りましたが、来られない人は電話で相談するなどしています。
2カ月に1回は相談員や弁護士などが集まり情報交換。専門家のレクチャーやアドバイス、学習会も。「交流と学びがあるから続けられる」と前沢さんは言います。
■さまざまな団体と協力
フードパントリーも、城南グループの職員を中心に地域の人たちとともに行っている活動です。今年の7月から第4金曜日に、無料で食材を提供しています。
コロナ以前は、子ども食堂として、16年12月から月1回開催していました。参加者15人ほどでスタートし、最大で90人、平均60~70人が参加しています。午後5時半からのお楽しみ企画の後、ご飯を食べて7時ごろに解散します。
運営は東京都の助成金と購買生協や地域からの寄付で成り立っています。今年度は新型コロナウイルス感染拡大を受け、都から年間170万円の助成が決定。しかし、感染対策の費用にしか使えません。子ども食堂事務局長の諏佐史枝さん(三ツ木診療所事務長)は「審査に通れば助成が出るが、見極めが難しく問い合わせしながら買う。自己負担になると困るので使いにくい」と話します。
城南グループだけでなく、区の子ども食堂連絡会と社会福祉協議会とも協力し、会議でお互いの活動を交流。諏佐さんは、「協力できる人たちがこんなにいると驚いた。子どもや生活保護家庭に食を届けるために、身を削って奮闘する人もいて、世界が広がった」と言います。
■誰もが来られる場所を
フードパントリーは午後5時から配布開始。「子どもたちは元気?」「大変なことはありますか?」と声をかけて渡します。いま必要な物を聞くと「生鮮食品」という回答が多かったため、寄付や助成金で野菜や果物を買い、食材セットに追加しています。
「いろんな窓口がないと困っている人とつながれない」と、食材セットの中に、よろず相談の連絡先を書いたお便りも入れています。「誰でも来ていいと言える場所づくりができた」と諏佐さん。
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「“貧困”と言ってもいろいろある」「経済面だけでなく相談相手がいないことも貧困なのかも」とスタッフの話し合いは続きます。子ども食堂が一翼を担えたらと、コロナ禍でもフードパントリーとして活動を続けています。
子ども食堂の名前は『大森東しあわせ食堂』。地域にしあわせを届ける場所にもなっています。
(民医連新聞 第1725号 2020年11月2日)