「ここに来て気分が晴れた」 いのちの相談所 山梨民医連 地域も求める支援の手を届けよう
コロナ禍で困難を抱える人が増える中、民医連のアウトリーチ活動が、地域で歓迎されています。山梨民医連の各事業所が「いのちの相談所」ポスターの掲示をお願いして回ると、商店街や自治会が快く協力してくれました。甲府健康友の会は、そんな商店のひとつの協力を得て、相談会を開催しました。(丸山いぶき記者)
9月12日、甲府市中心街の大通りから一本入った住宅地にある野菜直売所「まち駅・横沢」の看板に、店主の味のある筆づかいで「共立病院コロナ相談会 無料」の文字が躍ります。この日は、「コロナに負けない! くらしと健康相談会」。3月に企画しながらコロナ禍でやむなく中止した、甲府健康友の会の相談会のリベンジ企画です。友の会の会員4人と甲府共立病院の職員5人が、感染対策のアクリル板や消毒液を設置。参加者全員が検温を済ませ、相談会が始まりました。
■「知り合いにもすすめたい」
60代の男性は体の不調で働けず経済的に苦しくなりましたが、「よくなって働きたい」と生活保護などの利用には消極的でした。しかし、山梨民医連と山梨健康友の会でとりくむ地域のくらし・助け合い事業、NPO法人「ゆいまる」のボランティア活動で、力を発揮できるかもしれないとわかると、男性の表情はパッと明るくなりました。草刈りなど、仕事で培ってきた技術を生かせそう、と早速、連絡先を伝えていました。
男性は「自分ひとりで何とかできると思いながら、モヤモヤしていたが、話しているうちに気分も晴れた。はじめはためらって勇気が要ったけど、ちょっと困ってる人は、こういうところに相談に来るべきだね。今度は俺も知り合いにすすめたい。来て良かった」とスッキリした表情でした。この日は3人が相談に訪れました。
「居場所や生きがいを見つけるお手伝いをすることも支援だと、あらためて感じました」と話すのは、相談にあたった甲府共立病院組織課の右田厚子さん(SW)。「介護保険サービスの利用より手前で、介護予防にもなる友の会活動を広げたい」と願っていたところ、組織課のソーシャルワーク機能強化の方針から2018年に友の会担当となりました。
店内には「いのちの相談所」のポスターが張られています。店主の田中博さんは、「地域を活性化したい」とさまざまなイベントに場所を提供。3月以降はすべてを中止しましたが、「この相談会だけは特例。再度相談があったときは大賛成だった」と話します。
右田さんが「コロナでますます広がった格差と貧困、分断を乗り越えていくには地域の連帯が必要。今日は大きな一歩になりました」とお礼を言うと、「生き死にの問題に直面している人にいちばんに手を差し伸べるべきなのに、今の政治はおかしい。今日みたいな活動こそ必要。日本人はもっと声を上げないと!」と田中さん。当日、友の会にも入会しました。
■つながってない人に届け
山梨民医連では、県連をあげて「いのちの相談所」にとりくんでいます。各事業所が地元商店街や自治会に、全日本民医連が作成したポスターの掲示をお願いして回り、好意的に受け止められています。「気になる患者さんもいるから、これからは『共立さんに相談してみたら』と対応できる」(民医連外の薬局)、「買い物に来るお年寄りを見ていると心配な人が多い。ぜひ協力したい」(コンビニ)、「大切な活動だね」(大手ドラッグストア)など、快諾や激励をもらっています。
南アルプス市にある巨摩(こま)共立病院は10月1日、市内のコンビニ約20店にポスター掲示を依頼して回るいっせい行動をしました。参加した吉野美佐さん(SW)は、「お願いした6軒すべてで受け取ってくれて、早速張ってくれる店も2軒あった」と話します。吉野さんは全日本民医連が行った「コロナ禍を起因とした困窮事例」調査に20~40代男女の3事例を報告。「ベースに深刻な貧困があり、コロナが追い打ちをかけていると感じます。もともと苦しい人、相談につながれていない人が今、どうしているのか心配です」と話していました。
県連では、相談所の常設化と相談体制づくりもすすめています。
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全日本民医連は、今こそ地域に打って出て、さまざまな困難に寄り添ったとりくみを大胆に展開しようと、「いのちの相談所」のとりくみを呼びかけています。
(民医連新聞 第1724号 2020年10月19日)