民医連のとりくみをふり返り今後の感染拡大への備えを 新型コロナ “中間まとめ”公表
全日本民医連理事会はこのほど、「新型コロナウイルス感染症に対する取り組みの到達と課題~6月末までの中間的な取りまとめ~」(以下、中間まとめ)を公表しました。対策本部の副本部長・根岸京田さんに聞きました。(丸山聡子記者)
第44回定期総会(2月20~22日、熊本)の終了後、全日本民医連はただちに新型コロナウイルス感染症対策本部を発足させました(2月29日)。根岸さんは、「急速に感染が拡大し、民医連の事業所での感染者の発生や帰国者・接触者外来の開設、発熱患者の受け入れなど、短期間にいろいろなことが次々と起きた。この数カ月をふり返り、まとめることは今後にとって必要だ」と話します。
新型コロナウイルス感染症への対応が長期間におよぶことはほぼ確実です。「中間まとめ」は、感染症発生から今までどう対応してきたか、教訓をまとめて共有し、感染拡大に備えて課題をまとめ準備することが目的です。
■受療権、 医療機関を守れ
1章は、対策本部設置からのとりくみの経過をまとめています。4月5日には、会長声明「全国の職員・共同組織の皆さんへ 目前の危機を、共に乗り越えるために」を発表。5月までに11回にわたり、医療供給体制・検査体制の強化、国民の受療権の保障などを国に求めました。31の県連で県や市区町村への要請を行いました。
従来の国保保険証の窓口留め置きや機械的な資格証明書発行、国保非保険者にはなかった傷病手当などでは、画期的な前進がありました。ひとつは、「資格証明書交付世帯への保険証の交付・郵送」です。把握できただけで34の自治体が保険証の一律郵送を実施しました。次に「国保傷病手当の交付金の被用者以外への拡大」。山梨、長野、鳥取などの自治体で対象範囲の拡大が実現しています。
全国の医療機関が経営危機に立たされています。医療機関への減収補てんは、日本病院会、日本医師会など医療界全体の共通した要求です。また、介護事業所の公的支援はほとんどなく、抜本的な財政支援が必要です。検査態勢の脆弱(ぜいじゃく)さ、保健所を減らし続けてきた国の姿勢も批判しています。
■まず診る、 何とかする
「患者・地域の人たちと、職員を守りきること、そして病院、診療所、介護事業所をひとつもつぶさないことを念頭に置いた」と根岸さん。2章は民医連が地域で果たした内容について。「患者・利用者と地域を守る、職員を守る、経営を守る」姿勢を貫き、17病院で新型コロナウイルス感染症受け入れ病床を準備し入院治療、44病院で発熱外来を設置、33病院で疑似症や陽性者を受け入れました。
「まず診る、援助する、何とかする」スタンスで、独自に発熱外来を設置するなど受療権を守る活動を展開。診療所で働く根岸さんも、「発熱で診療を断られ、たらい回しにされる患者の受療権を守る、そのことによって地域で陽性者を診る医療機関を守ることになると痛感した」と言います。介護事業所では防護具不足や「密」を避けられない中で、医療との連携を強化し、対応しています。
共同組織と力を合わせ、工夫をこらした活動も展開。電話相談会やリハビリ動画の配信に加え、フェイスシールドの作成などは医療現場を励ましました。
3章では、実際に新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れ、院内感染を経験した3つの病院の事例を分析。その教訓を9つのポイントに整理しています。
4章では、風評被害から職員を守るとりくみについて。また、感染リスクと向き合い、強いストレスを感じながら働く職員の健康管理、情報共有、就業規則や休業支援策などにも触れています。
■今後のとりくみについて
最後の5章では、今後の感染拡大を想定し、課題を5つに整理しました(別表)。コロナ禍で、生活に困窮し、社会から孤立する人たちの増加が懸念されています。根岸さんは、「数カ月のとりくみで蓄積できた地域での連携を深め、受療権を守り抜きましょう。菅政権が掲げる“安倍政治の継承”を許さず、社会保障のあり方について地域で議論し、個人の尊厳が大切にされるまちづくりをめざしていきましょう」と呼びかけています。
【今後のとりくみ】
(1) 地域の中で受療権を守るために役割を果たす
(2) 収束するまで、職員のいのちと健康を守り抜く
(3) あらためて事業所の感染対策の水準の向上を
(4) 介護分野で感染対策の強化と長期化を見据えた対応をすすめる
(5) 法人(事業所)として、COVID―19 に対応したBCP(事業継続計画)を整備する
(6) 共同組織とともにコロナ禍でこそのまちづくりをすすめる
(民医連新聞 第1724号 2020年10月19日)