相談室日誌 連載483 難病患者の医療や介護が不足 住み慣れた地域で支援を(福井)
当ショートステイでは昨年10月から、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)の60代前半の患者Aさんを受け入れています。独身・独居であり、ヘルパーや訪問看護のサービスを利用していましたが、ADL低下に伴い、点でささえるサービスには限界が出てきました。次の療養先につなげるため、当ショートステイの利用となりました。しかし、当地域の医療・介護サービス体制は薄く、次の受け入れ先が決まらないまま、一度も自宅に戻ることなく、10カ月が経過しようとしています。
市内に大きな病院は2つしかなく、神経内科の専門医は週1回の診察のみ。ALSなどの難病に特化した受け入れ施設やサービスもありません。地域で暮らす難病の患者は、週1回または月1回の診察を待つか、片道1時間以上離れた病院まで通院しているのが現状です。レスパイト目的での短期入所療養介護施設も1カ所のみで、自宅で暮らすALSなどの難病患者の定期的なショートステイ利用も難しい状態です。家族がいる場合も、その介護負担は大きく、「何かあったらどうするのか。どこを頼るのか」という問題に直面しています。
Aさんは、病気の進行とともに身体状況も変化しており、生活全般に医療的なケアや介護が必要となってきています。この半年の間、本人と相談のうえ、県内の入院先や他県の療養先を見学し、今後の相談もしてきました。しかし、Aさんの思いとはかけ離れた生活への不安感や、「住み慣れた地域で最期を迎えたい」という思いが強くあり、療養先を見つけることができずに、現在もなお当ショートステイでの生活を送っています。
地域包括ケアシステムとは、要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで続けることができるように、地域内で助け合う体制のことです。しかし、実際に提供できるサービスは乏しく、十分な体制は整っていません。地域で生活する人をささえるために、制度の改正や介護職への処遇改善の訴えをしていきたいと考えています。
課題は山積みですが、民医連職員として利用者に何ができるのか、いま一度考え、行動していきたいと思います。
(民医連新聞 第1721号 2020年9月7日)
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