診察室から チームでかかわる文化がささえ
2000年に医師となり、民医連の医師としてはや20年。当診療所への赴任から15年が過ぎ、診療の場の大半を外来診療と在宅診療で行ってきた。
赴任時は外来も在宅も患者数は少なく「ゆったり」会話中心の診療を行っていた。患者の家族、生まれ育ち、仕事や学校、人間関係、経済的問題や離婚、結婚、出産、育児、死についてなどを聴く「よろず相談」に、一般の疾患の診療を行うような診療を続けてきた。幸い信頼を得たようで、患者数も増え「診療所家庭医」としての仕事に充実感をもって過ごす日々が続いた。
しかし、患者が増えるに従い「ゆったり」から「せかされ」診療をせざるを得なくなった。それでも診療スタイルを変えず、何とか時間短縮を意識し集中力を高め、会話技法や診療効率化の工夫をしたが、カルテの山は高くなる一方だった。2~3時間待ちで患者やスタッフからもクレームが噴出し、充実感は消え去り、重圧感や診療後の不全感が残るようになり、心身ともに強い疲労感が蓄積していった。
毎日100メートル走を何度もくり返し、それでフルマラソンを走っていくような感覚だった。Facebookの「民医連交流の広場」にこの気持ちを書き込み、多くの励ましのコメントをもらい、そのおかげで何とか燃え尽きることなく、今の自分がいる。
その後、2018年に幸運が舞い込む。若手で有能な家庭医が着任し、総合診療専攻医も非常勤で加わり、複数医師体制となったのだ。ひとりで抱え込まず同僚医師や看護師、事務職員、生協の組合員、地域の多職種とチームでかかわる文化ができた。
今も「せかされ」診療は続いているが、充実感は保ちながら「よろず相談」診療を濃厚に行っている。外来の2~3時間待ちは解決せず、在宅件数は地域で随一、休日夜間も気が抜けない。課題は次から次へとやってくるが、チームという文化が今のささえになっている。(廣田勝弘、山口・生協小野田診療所)
(民医連新聞 第1719号 2020年8月3日)