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民医連新聞

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無低診利用者の薬代助成 帯広市議会で採択 患者の声を運動につなげて 北海道十勝勤医協

 「薬代の支払いが大変」―。北海道・十勝勤医協では無料低額診療事業(以下「無低診」)を利用している患者の声を受けて職員が立ち上がり、帯広市に対して無低診利用者への保険薬局の薬代助成を求めて請願署名を開始しました。市議会に陳情書を提出し、今年3月の本会議で全会一致で採択されました。帯広病院の野口貴弘さん(事務)の報告です。

■薬代の負担が苦しい

 運動の発端は無低診を利用している患者の切実な声でした。60代の男性Aさんは、糖尿病とその合併症で定期的に通院が必要でした。月6万5000円の年金から住宅ローンの返済が重くのしかかり、貯蓄もない状況でした。2018年10月に外来看護師がAさん宅を訪問すると、「病院代はかからないが、薬代の負担が苦しい。なんとかならないか」と相談を受けました。
 そこで、帯広病院とあじさい薬局では翌月に合同カンファレンスを開き、Aさんの事例を検討しました。あじさい薬局からは、「今の制度では、帯広病院で無低診を利用した患者の処方せんを受けても、患者の経済状況に配慮した対応ができない」と話がありました。帯広病院からも、「無低診の利用を勧めても、保険薬局で薬代が減免されないのであればあまり意味がない、と申請を諦める患者もいる」などの意見も寄せられました。「患者のために私たちにできることはないか」「自治体へ補助を出してもらう運動が必要ではないか」と話し合い、さっそく行動することにしました。

■他の実施機関と共同

 十勝勤医協では、保険薬局の無低診事業の実現に向けたとりくみとして、昨年9月から帯広市長あてに「保険薬局に対する無料低額診療事業に関する請願署名」を開始。十勝管内で無低診を行っているのは帯広市と音更(おとふけ)町の4法人8医療機関。道内市町村別では、帯広市は札幌市に次いで実施医療機関が多いのが特徴です。
 帯広病院では昨年10月から11月にかけて、民医連以外で無低診を実施している医療機関に呼びかけ、無低診の連携や制度を紹介する合同ビラを公的機関に置くこと、十勝勤医協が事務局となって多方面に働きかけることについて合意できました。合同ビラに「無料低額診療事業連絡会」と明記してとりくむことを確認し、請願署名など共同のとりくみを実現しました。

■厚生委員会・本会議で採択

 昨年12月16日には、帯広市議会に陳情書を提出。1月7日には帯広市長あての請願署名を提出しました。請願署名は友の会の協力もあり、昨年9月から12月までの約4カ月間で1755筆が集まりました。そして1月15日には厚生委員会が開かれ、十勝勤医協から陳情書の趣旨説明を行い、無低診を利用する患者の厳しい生活実態と切実な声を届けました。「私たちがかかわってきた薬代の支払いに苦しむ患者は氷山の一角。薬代助成が実現されれば、経済的な理由による受診抑制や、薬の我慢を防ぐとりくみにつながる」と訴えました。趣旨説明を受けて参考人質疑が行われた後、陳情に対する市からの答弁がありましたが、「経済的な困窮については国の責任でとりくむべき課題」と助成は難しいとの見解でした。
 しかし、2月12日の厚生委員会では、陳情が全会一致で採択されました。各市議会議員から「重要な役割を果たしている制度が不十分」「薬代が払えないがために治療が中断されてしまえば、医療が完結できているとは言えない」などの賛成討論がありました。そして、3月27日に開かれた本会議でも、全会一致で採択されました。患者の切実な声を原点に、友の会、十勝社保協、民医連以外の医療機関ともいっしょにとりくんだ共同の運動の成果です。

■助成の早期予算化を

 陳情が全会一致で採択されたことを受け、7月16日に薬代助成の早期予算化を求める要望書を帯広市に提出しました。
 十勝地域でも、コロナ禍の影響で生活苦となった患者からの生活相談が増えています。そして、その多くの患者が薬代助成を必要としています。コロナ禍での困難事例を紹介し、市に対してスピード感を持った対応を求めています。

※薬代助成を実現した自治体は、全国で9つ。うち6つが北海道。

(民医連新聞 第1719号 2020年8月3日)