相談室日誌 連載479 新型コロナウイルス感染症がもたらした老健への影響(山形)
2020年4月7日、政府から新型コロナウイルス感染症による「緊急事態宣言」が出されました。全日本民医連の各事業所でも、日々、いのちを守るための実践にとりくんでいることを耳にしています。山形県では、6月19日現在69人の感染者が発生し、感染防止対策や必要な物品の確保などについて、頭を悩ます日々が続いています。
そのような状況のなか、当法人の老健施設では、日常とは異なった利用者・家族からの相談がありました。「自宅に帰る予定だったが、施設の外に出ることでコロナウイルスに感染する可能性がある。もし感染したら再入所できなくなるので、家族の介護負担が大きくなる」「退所後の通院で病院に行くのが心配だ。知らないうちに感染してしまい、持病のある家族にうつしてしまったら大変なことになる」といった内容でした。
その結果、5件の在宅退所予定がキャンセルや延期となりました。デイケアでは利用自粛が6件ありました。
退所ができなくなったことで、老健のベッド回転率は10%以下に低下しました。在宅復帰率は過去の実績もあり、トータルで30%以上を維持できました。
しかし、ベッド回転率10%以下という数値は、在宅強化型老健の基準を下回ることになり、今後も継続して在宅強化型老健として運営できるかどうかに大きく影響します。そのため行政に確認したところ、「家族や本人が心配して退所しないというのは、厚労省が示している特例措置の対象にはならない」との返答でした。
「過度な心配はしないで」といった見解もありますが、誰ひとり経験したことのない感染症に対し、何らかの疾病を抱える利用者や、その介護にあたる家族の不安は想像以上のものだと感じています。私たち民医連のSWにとって、利用者・家族の立場に立ち、生活に不利益が生じないよう、今後も在宅強化型老健として継続していけるよう、行政機関に早急な対応を求めることが重要だと実感しています。
(民医連新聞 第1717号 2020年7月6日)
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