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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 ADL改善から社会参加へ山梨・共立介護福祉 センターいけだ 利用者の「外出したい」 介護者の「できることは自分で」を多職種で実現

 強い在宅希望を持つ一方、家族に対して過度の介護を求める利用者に対し、多職種でかかわることでADLが改善、家族の負担も軽減し、社会参加につながりました。第14回学術・運動交流集会で共立介護福祉センターいけだの理学療法士、原啓太さん(現在‥共立介護福祉センターたから)が報告しました。

 90代の男性、Aさん(要介護4)は独居生活を送っています。隣家には次男夫婦が住んでおり、主な介護者は次男の妻、Bさんでした。Aさんは2年前に胃がんを患い、胃を切除。その1年後に腰椎圧迫骨折を受傷しました。食事や排泄を自力でできる力がありましたが、Bさんに介助を依頼することが多く、Bさんの心身の疲労から短期入所を余儀なくされた経過もありました。
 退所後から介護、看護、セラピストが一体となり支援を行うため、当ステーションからセラピストの訪問を行うことになりました。初期評価時、歩行器歩行は自立していました。しかし、排泄はおむつを使用し、食事はベッド上で介助を受けていました。利用サービスは週2回の訪問看護、訪問リハビリ、毎日の訪問介護となりました。

■役割分担してかかわる

 歩行器歩行やトイレ動作を行う能力はありましたが、実生活では介助を求めることが多く、Bさんに負担がかかっていました。介護者の介護負担を評価する“Zarit介護負担尺度”をBさんに行うと、介護を負担に感じていることがわかりました()。
 Aさんの「できるだけ家で過ごしたい」「自分の行きたいところに外出したい」という思いと、Bさんの「できることは自分でやってほしい」「週2回は休みたい」という思いをくみ取り、目標を設定。短期目標は、居間で食事を自分でとること、排泄はトイレか尿器を使うこと。長期目標は、家族の介助で外出できること、としました。
 午後2時からの訪問時間を11時半からに変更し、昼食や整容、排泄の場面に直接かかわりました。テーブルや椅子の調整を行い、居間で食事をとるように促しました。食事後はトイレでの排泄を促しました。(1)食事や排泄を自力で行うことで外出するために必要な体力を養えること、(2)清潔を保つことで疾病予防につながり、在宅生活を維持できること、をAさんに説明しました。車いすによる外出練習もあわせて行いました。
 訪問看護が体調管理、排泄、疼痛コントロールを行い、訪問介護が体調を見ながらおむつとリハビリパンツを時間帯で切り替え、排泄の失敗を減らしました。セラピストは離床やADL拡大が外出につながることを指導し、多職種で役割分担をしてかかわりました。

■具体的な支援で意欲的に

 4カ月後、食事の時間になると自ら居間に向かい、自分で食事をとるAさん。排泄は調子によりトイレ、尿器を使い分けることができるようになりました。
 Bさんの“Zarit介護負担尺度”も改善しました()。体調を崩すことがなくなり、Aさんと車で外出できるようになりました。Aさんも昼間の食事・排泄だけでなく、夜間や早朝のパット交換を自分で行うなど、自分でできることは積極的に行うようになりました。訪問のない日も居間で過ごすことが増え、外出も行き先が具体的(花見、会社など)になり、より意欲的になりました。
 目標管理とともに、食事・排泄を行う時間に訪問することで実際の動作を評価し、具体的な提案ができました。生活の中で「自分でできることは自分で行う」ことで体力がつき、生活能力が改善し、外出という目標につながることを説明しながらかかわりました。
 目標を共有しながら「居間での食事の自力摂取」や「排泄をトイレで行うこと」に対して、多職種が役割を果たしました。結果、過度の負担や排泄の失敗を予防しながらADLを改善することができました。これが「家族介助による外出」という目標達成につながった要因と考えます。

*  *  *

 多職種連携におけるセラピストの役割として「評価にもとづく目標設定」「目標に向けた具体的な支援の提案」が重要だと考えます。地域住民の健康を守り、生活がより豊かになるような支援をするため、セラピストとして知識・技術を高めたいと思います。

(民医連新聞 第1717号 2020年7月6日)