SDHの視点でいのちと生活守る コロナ禍の各地で実践
新型コロナウイルス感染症拡大の中、各地の民医連で、いのちとくらし、雇用などを守るとりくみが行われています。
誰でも相談できる! 上伊那生協病院
【長野発】当院を会場に5月18日、すべての人を対象にした「新型コロナ 緊急生活支援ネットワーク なんでも無料相談会」を行いました。上伊那地域は県内でも外国人労働者が多い地域です。
「これはリーマンショックよりもひどいことになる…」。そんな恐ろしい予感がしました。新型コロナウイルスがまん延しはじめた諸外国が、早い検査と封じ込め、生活や事業補償をしているのを横目に、日本はいまだに少ない検査数、役立ちそうもないアベノマスクさえ届く気配もありません。「自粛」のお願いを強いておいて補償は緒についたばかり。そんな状況に焦りを持ったからです。
私が仕事をする地域でも、バスの運転手の仕事がなくなり、収入がなくなって医療費が払えない、派遣での仕事が減った、という声が届きはじめました。リーマンショックの時と同様に「上伊那地域で外国人派遣労働者数十名解雇」と新聞で報道され、社会福祉協議会や生活就労支援センター「まいさぽ」に、どんどん相談が来ていることも知りました。すでに「医療どころじゃない」状況でした。
「ただ、こぼれ落ちてくるのを待っていていいのか?」生活に困り医療なんて後回し。そうなる前に少しでも早く、傷が浅いうちに何とかしないと! その思いは相談を受けるどこも同様でした。「とにかく、ワンストップ型で解決できる場を。物資支援も同時に!」との急な呼びかけに、労連や労協、医療生協はもちろん、社協や「まいさぽ」、弁護士など多くの関係者が集結。「まずは相談会をやろう!」と決まりました。
そして当日。マスコミ各社、テレビ局も2社来ました。最初の相談者が来たのは、午前9時の開始から遅れること20分後でした。ぽつぽつと相談者が来はじめました。なんでも無料相談会の広報が難しい中、10人の相談を受けました。予想通り外国籍9人、日本国籍1人と、圧倒的に外国籍の人が多く、失業、解雇、休業などで生活費、家賃に困っていました。町役場の職員も参加し給付や貸付など、その場でいくつもの申請もできました。その様子はテレビで放映されました。
共通の思いでとりくめたこと、これまでにないメンバーが一堂に会し各専門分野の力を発揮したことが画期的でした。町役場の担当と社協、「まいさぽ」、弁護士、労組、通訳ボランティア、医療、フードバンク担当、議員など総勢25人がテント張りから設営や片付け、受付、通訳、各相談、物資支援と役割を分けて行いました。
終了後のまとめでは「相談が押し寄せるが、分野によってはそこでは解決できないことばかり。でもここでは一気に解決に向かえる。今後もこの場を知ってもらってやっていきたい」と発言が。
今回のとりくみは、これまでとは違い、行政や半公的機関もいっしょに相談会を開催でき、相談に来た人が少しでも解決と今後の生活に希望を持てる、そんな力を持っています。次回は6月6日に実施する予定です。(鮎澤ゆかり、SW)
地域を励ますノボリ 淀川勤労者厚生協会
【大阪発】当法人では、新型コロナ禍のもとで、地域住民を励ますために街頭でアピールできるようにと、ノボリを作成し、各事業所で掲げています。スローガンの一つは大阪市解体とカジノ誘致に躍起になる一方で、保健所つぶしや市民病院廃止など地域医療つぶしをすすめてきた「維新」政治への批判を込めたものになっています。ノボリ作成と合わせて新型コロナ禍で使える各種支援制度を知らせるチラシを、西淀川社保協と共同で作成し、健康友の会会員や社保協参加団体構成員をはじめ西淀川区内へも配布。チラシを見た住民から問い合わせがあるなど、関心の高さがうかがえます。5月9日と16日には、いのちをつなぐ「なんでも電話相談会」にとりくみ、特別定額給付金などについて問い合わせもありました。
また19日には、西淀川区で毎月19日に行っている「戦争あかんドラムデモ」に代えて、「兵器の爆買い止めて、休業補償を!」の一人一文字スタンディング宣伝で、ノボリを活用しました。
ノボリは、全国の民医連事業所でも活用できます。全国で掲げて、地域住民を励ますアピール行動をとりくみましょう! 購入連絡先は、(株)関西共同印刷所(電話‥06―6452―1188)まで。(園部建史、事務)
電話相談で一筋の光に 茨城民医連
【茨城発】コロナ禍をうけて当県連は、無料電話相談を開始しました。労働団体と役割を分担し、それぞれの事務所を常設の相談所としました。広報は県連HPと法人の機関紙折り込みのほか、メディアや市町村の広報誌に掲載のお願いをしました。これまでの相談から2つの事例を紹介します。
○事例1 糖尿病で入院していたが費用負担に耐え切れず退院。通院治療に切り替えたが1回数万円かかり、これ以上は無理。家族の唯一の働き手は派遣社員で、コロナの影響で仕事がなくなった。治療しなければ死んでしまう。
○事例2 数年前に家族の介護のため離職し、糖尿病の治療を中断していた。最近になって治療を再開しようとしたがお金がない。社会福祉協議会に相談したが「コロナでないから補助の対象にならない」とまともに取り合ってもらえない。生活保護の受給もダメだった。白内障で目が見なくなる前になんとか糖尿病の治療をしたい。
2件とも無低診に誘導し、適用となりました。コロナ禍は直接・間接の困難を抱えた人びとを直撃しています。その人たちにとって一筋の光となれるよう、今後もがんばっていきたいと思います。(木村冬樹、事務)
LINEで無料塾 滋賀民医連医学生センター
【滋賀発】コロナ禍で県内の公立小中学校が休校となり、医学生センターでとりくんでいる中学生無料塾もお休みをしました。緊急事態宣言の再延長が決まり、講師の滋賀医大生から「教育環境によって、ますます格差が生じるのでは」との懸念の声が。LINEを使った中学生無料塾をしたらどうか、という医学生からの提案を受け、開催することにしました。
このとりくみが地元マスコミに注目され、NHK大津、中日新聞、京都新聞、しんぶん赤旗、滋賀民報に取り上げられました。KBS京都の「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」から依頼があり、医学生担当が15分ほど電話出演し、とりくみを説明。記事を見た人、ラジオを聴いた人から問い合わせがあり、休校で子どもの学習に困っている保護者の声が寄せられました。(小西祐治、事務)
フードバンク臨時便 松江保健生協
【島根発】新型コロナウイルス感染症拡大により、これまで以上に生活崩壊が危惧される状況が生まれています。松江市内にも日々の生活を送るだけでも大変な家族がたくさんいます。
松江保健生協も加わるフードバンクしまね「あったか元気便」では、これまでは学校の長期休暇に行っていましたが、コロナ禍の今だからこそ「元気便」を届けようと、臨時便として古志原小学校、津田小学校、市立第4中学校に通学する子どものいる111世帯(家族約400人)を対象に実施しました。
5月16日の仕分け作業には松江保健生協をはじめ、公民館、島根県社会福祉協議会、島根県社会福祉士会、JAしまね、生協しまね、グリーンコープ島根、島根県労福協地域つながりセンター、有志のみなさんなど27人のボランティアが参加しました。
お米をはじめレトルト食品、お菓子など各家庭に約8kgの食料品の箱詰め作業を行い、18日の週から順次配送が開始されました。今回は元気便からのメッセージのほかに、JA女性部手づくりのマスクもいっしょに送りました。(祖田智幸、事務)
(民医連新聞 第1715号 2020年6月1日)