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民医連新聞

民医連新聞

新型コロナウイルス感染症拡大 いのち守る現場に支援いますぐ

 3月19日、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が提言を発表し、「クラスター(患者集団)の感染源が追えない事例が散発的に発生している」と警鐘を鳴らしました。東京都などでは感染者が急増し、知事が「外出自粛」を要請しています。先が見通せない中、民医連の事業所では、患者と利用者を守るための奮闘が続いています。介護の現場で話を聞きました。(丸山聡子記者)

 「夫は数年前の入院以降、すごく清潔に気を遣うので、消毒薬やティッシュ類は多めに買い置きしています。でも、なくなってきて途方に暮れました。ヘルパーさんに何件もお店を回ってもらいました」と話すのは、夫(92歳)とふたり暮らしの館野直子さん(仮名、89歳)。夫婦で週3回の訪問介護を利用し、買い物やゴミ出しを頼んでいます。「足腰が痛くて、ゴミ集積所まで持って行けない。ヘルパーさんが来ないとすぐにたまってしまう」と直子さん。
 館野さん宅に訪問介護をしているのは、東京・ファミリーケアみさと(すこやか福祉会)です。所長の猪瀬茜さんは、「一番恐れているのは、ヘルパーが気づかないうちに感染を広げてしまうこと」と言います。マスクは4月にはなくなる見込みで、手づくりの布マスクを使い、しのいでいます。「利用者には、訪問介護は命綱。利用者と職員を守るための手立てを、国の責任ですぐに行ってほしい」と猪瀬さんは言います。

■ADL低下、引きこもり懸念

 同法人のデイサービスセンターなごみでは、利用者にマスクの着用を呼びかけていますが、手に入らない人も少なくありません。送迎時の検温とデイに到着してすぐの手洗いを徹底しています。
 数日前、デイの利用中に熱が38度を超えた利用者がいました。独居のため帰すこともできず、訪問看護などと連携しながら見守りました。所長の玉城志奈子さんは、「感染が疑われる利用者が出た場合、医療機関で受け入れてもらえるのか」と懸念しています。
 デイサービスは通常20数人が利用していますが、最近は感染のリスクを心配し毎日1~2人が休んでいます。「長引くと経営的にも厳しい」と玉城さん。気がかりは、地域で感染が拡大し、休業を余儀なくされた場合。「ひとり暮らしで昼食や入浴をデイに頼っている人も多い。休業となったら、自宅でずっと過ごせるのか、入浴できず清潔を保てるのか」と玉城さん。猪瀬さんも、「厚労大臣は、デイの職員を訪問に回すようにと言ったけれど、資格要件も違うし、職員も利用者も急に対応はできない」と訴えます。
 ケアマネジャーが月1回訪問するモニタリングも自粛。猪瀬さんは、「今まで来ていた人が来なくなり、友の会や地域の集いの場がなくなり、高齢者の引きこもりやADLの低下が心配です」と話します。デイを休んでADLが低下し、新規に訪問を開始したり訪問回数を増やす人も出ています。
 同じような事態は全国で起きています。京都・総合ケアステーションわかば訪問介護所長の谷口賢治さんも、「独居で生活援助を利用していた人が、家族が心配して、しばらく利用を中断。意欲が衰え、生活環境が悪化し、利用を再開しました」と言います。「利用者に感染を広げない、同時に、サービスが必要な高齢者を孤立させないためには、どうすればいいか」。手探りを続けています。(取材‥3月24日)


●受療権を守るとりくみ
 高知市は国保料の滞納状況にかかわらず、9月末までの被保険者証を3月16日に送付しました。浜口佳寿子市議(共産)の質問に対し、岡﨑誠也市長が「全ての国保世帯に保険証が届く対応をとる」と答えたもの。
 北海道社保協は、全世帯への被保険者証の発行を要請。北見市は、資格証明書を発行していた340世帯400人に2カ月分の短期保険証を発行しています。

●住民の不安にこたえ
 熊本民医連では、健康友の会の行事が中止になったことを受け、会員あてに手紙を送付。感染予防のポイントの解説とともに、「心配ごとは友の会へ相談を」と呼びかけています。

(民医連新聞 第1713号 2020年4月6日)