悲劇の前に全原発の廃炉を 福島とつながり福井へつなぐ 福井 ふくふくPJ
東京電力福島第一原発事故から、今年3月で10年目に入ります。福島で何が起き、続いているのか、直接見て聞いて、感じ学ぼう―。その思いで福井民医連は、2016年から「つながるプロジェクト福島&福井(ふくふくPJ)」で現地視察を行っています。昨年11月1~3日、6人が参加した4回目の視察に同行しました。(丸山いぶき記者)
県内4自治体6カ所に15基の原発を抱え、「原発銀座」とも呼ばれる福井県。原発が立地する敦賀市に住む森川十寸穂(ますほ)さん(看護師)は、「子どもたちのために原発はなくしたい。でも、あまりに身近でどうすればいいか…」と話します。「原発が集中する嶺南(れいなん)(県南部)で原発の話をするとピリつく」と福井市出身の田嶋清孝さん(事務)が言うと、敦賀市出身の田上和江さん(看護師)が「3人に1人は原発関係者。生活の一部だから」とこたえます。
■過ちをくり返さないで
福島・いわき市に着くと早速、伊東達也さん(福島・浜通り医療生協元理事長)が講演。地震直後、同市は津波被害の混乱から一転、3月12日には原発事故でパニックに陥りました。
2019年7月31日、東電は福島第二原発の廃炉を決定。福島は「原発ゼロの県」へ向かいます。背景には、県内全60自治体議会に求めた「全10基廃炉決議」運動がありました。
ただ、伊東さんは言います。「福島は取り返しのつかない悲劇の後の廃炉。原発が立地するほかの12道県はどうか、過ちをくり返さないで。大事故の前に廃炉を実現してください」。
■線量計の音に高まる緊張
2日目は、国道6号線をマイクロバスで、いわき市から浪江町まで北上。車内では放射線量測定器が「ピッ、ピッ」と音を刻みます。出発時の線量は0・064μSv/時でした(自然放射線量0・04μSv/時)。
福島では自主避難者を含め、約9万人が事故前に住んでいた市町村に帰れずにいると推計されます。一方、国は東京五輪へ向け「復興」を急いでいます。聖火の出発点のJヴィレッジには、サッカー場11面が整備され、大勢が練習していました(0・242μSv/時)。
第一原発が立地する大熊町に入ると、線量計は「ピー」と鳴りっぱなしに。川崎晶子さん(看護師)が「4・96μSv/時!」と知らせました。沿道にはバリケードと、荒廃した家や商店が。浪江町では住宅街だった沿岸部が広大な草原になっていました。原発事故のせいで住民は、津波の犠牲になった家族の遺体も探せませんでした。
視察を終え、伊東さんは「5時間で0・5μSv被ばくしました。他県での24時間分」と積算線量を報告しました。「べらぼうに高くもないけど低くもない。全国で原発労働者に検診を! 多くの仲間に、福島を見に来てほしい」と訴えました。
小形てるみさん(看護師)は「自分にできることが見つかった。若い人が福島を見に行けるように後押しします」と。「原発事故への備えなんてできない。絶対に廃炉にしないと!」と田中やよいさん(看護師)は話していました。
【紹介】
●福島を視察しませんか?
相談窓口:元の生活をかえせ・原発被害いわき市民訴訟原告団/原発事故の完全賠償をさせる会(電話‥0246―27―3322)
●『大地の歌ごえ』たなかもとじ著、価格2200円+税、新日本出版社(電話‥03―3423―8402)
福島県民の苦悩が丹念に描かれている、伊東さんおすすめの小説。
(民医連新聞 第1707号 2020年1月6日)
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