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民医連新聞

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民医連綱領実践10年へ これが民医連の看護! キラッと光る私たちのとりくみ 山形・至誠堂総合病院看護部

 山形・至誠堂総合病院の看護部は、『学習ブックレット 民医連の綱領と歴史』読了後も、より楽しく日頃の実践と結びつけて綱領を深めようと、民医連らしい写真を集め、各職場でワンショットポスターを作成しました。そこに込められた「綱領の実践」「民医連らしさ」とは? 看護の現場を訪ねました。(丸山いぶき記者)

 ワンショットポスターには、患者や職員の笑顔あふれる写真、心に残る事例、チーム医療の実践、職員ひとりひとりの思いなどが、大判の模造紙いっぱいに表現されています。「あきらめない看護」「目の前にいる患者さんを大切に。そこから見えてきた問題を解決していきたい」「地域の人にささえられ、地域の人とともに存在する病院」「災害支援」「平和への思い」などの言葉も並びます。外来、3~6階の各病棟、医療安全管理室の看護師が、それぞれ自由に工夫を凝らしつくりました。
 「形にしたことで、普段やっていること、そして、これからも大切にしていくことを確認できた」と話すのは、制作に携わった外来の工藤依子さん。ポスターには、写真とともにたくさんのエピソードが込められました。

■家族が願う在宅生活を

 海鉾(かいほこ)鉄夫さん(65)は、95歳の母・キクさんの介護を、10年にわたりひとりで続けています。キクさんは5年前に脳梗塞を発症し、以後、5階病棟での入院生活が長くなりました。人工呼吸器を装着し、痰の吸引など医療ケアが欠かせないキクさん。在宅生活は困難かと思われました。しかし、鉄夫さんの「母ちゃんに、在宅生活させてやりたい」との思いに応え、年2回、春と秋に各4週間、在宅生活を送っています。
 数日前に退院した海鉾さん宅を訪ねました。在宅酸素のポンプ音だけが響き、大きく開放的な窓から暖かい日差しが入るキクさんの部屋。「キクさん、病院にいる時より肌がつやつやしてるね」と藤山幸子さん(現在は医療安全管理室)が声をかけました。キクさんの介護で夜も寝られず、自身の通院もままならない鉄夫さんですが、「在宅生活できる人がもっと増えてくれたら」と話します。「至誠堂がないと困る。最後のよりどころ」と信頼を寄せます。

■民医連らしさ知った

 入職直後、いっしょに花見に行った末期がんの男性患者との思い出を話してくれたのは、3階急性期病棟の鈴木光さん(1年目)。「最期の桜。きれいだな~。ありがとう」と言ってくれた男性の目からは涙があふれました。死を覚悟しながら入院生活を送る男性の希望に沿って何かできないか? 職員が考えた末の花見でした。「多職種カンファレンスで患者さんにとって一番いい医療・看護を考える至誠堂病院。そこに民医連らしさを感じます」と鈴木さん。

綱領の実践に確信を

■その言葉の裏には

 「おれ、早ぐ帰ったいんだ」
 患者の何気ない一言が気になり生活背景を聞き、無料低額診療事業につなげた事例もありました。
 右被殻出血で左半身に麻痺が残る状態で、他院から転院してきた50代男性。「話を聞くと、妻にはパニック障害があり就労できず、直前に自身の生命保険も解約。日々の生活にも困っているようでした」と、4階回復期リハ病棟の森香奈さんは振り返ります。
 男性の自宅はエレベーターのない市営住宅の3階。退院を望む一方、病室で不安そうに麻痺した左手をさする姿もありました。「回復の余地はあるのに、このままでは、社会復帰に至るまでの回復レベルに到達できないまま、退院してしまう」と、森さんは医療相談員に相談。「無低診の審査に通り、退院後も元気に通院する姿を見られてよかった」と話します。
 森さんにとって至誠堂総合病院は、「地域に密着して、どんな患者にも心から寄り添って、医療を提供している病院」です。

■現場のがんばりを形に

 ワンショットポスターを発案したのは犬石里香看護部長。看護部は、職責者は全ページ、一般職員は綱領編まで、非常勤を含む全職員がブックレットを読了。さらに、「楽しく学び、看護・介護を確信する」をコンセプトに、若い職員にも身近な写真を使い、アピールする方法を考えました。
 「現場は忙しくて疲へいしています。でも、その日常の看護が、私たちがめざす民医連の綱領と結びついていることを理解して、がんばっていることは無駄じゃない、と確信してほしかった」と犬石さん。ポスターは、看護奨学生の集いや高校生1日看護体験でも活用し、学生が民医連の看護に触れる機会にもつながっています。
 同院の髙橋敬治院長は、「とってもいいとりくみに感心した」と話します。「綱領は原点。地域の中で当院の存在意義、独自性に確信を持ち、科学的で民主的な管理運営を貫く上でも、職員ひとりひとりが、その原点をしっかりつかむことが重要。患者とかかわりが深く、役割が大きい看護師のみなさんが、綱領にのっとり実践してくれているのが頼もしいです」。

(民医連新聞 第1705号 2019年12月2日)