相談室日誌 連載476 家族への支援が必要なケース 増え続ける社会の背景は(大阪)
Aさんは両親と3人暮らし。両親はともに認知症があり、Aさんが生活をささえています。Aさんとのやり取りの中で、Aさん自身、対人関係がうまく取り結べない様子がうかがえます。家事の切り盛りをしていた母親が入院したことで、Aさんの負担が増えていました。
両親の生活支援とAさんの負担軽減を目的に、ケアマネジャーは老健のショートステイや入所を提案。実際にサービスを利用することで母親の身体機能は上がり、食事面も改善できました。しかし、老健の利用料が気になるAさんは、「休息になんかならない!」と訴えます。
ケアマネはAさんの両親をささえる視点でサービスを考えますが、家族単位でとらえるなら、Aさんをささえる視点も必要です。Aさんの支援とケアマネへのフォローのため、地域包括支援センターへ介入を依頼しました。
Aさんの思いを聞き取り、課題が整理され、金銭管理の支援で家計の状態が判明。Aさんの中で漠然としていたお金の不安が、軽減しました。Aさんの状態把握が必要と判断され、障害の相談員との面談も始まりました。
「自分の味方がいる」と思えるようになったAさん。言動が落ち着き、今後について考えられるようになりました。「母の発病後、がんばってきたが限界」「今後は親子が別で過ごす方が自分たちのためになる」と判断。そのことを自分の言葉で両親へ伝えました。精神的に両親に依存してきたAさん。大きな変化と自立への一歩でした。その後の面談で「みんな、優しくしてくれる。なんでやろ」と涙。Aさんの「長年の生きづらさ」を物語っていました。
老健施設は、「要介護認定者」の支援を対象としています。家族が抱える障害や未熟さ、社会のしわ寄せを垣間見ます。老健で解決できなくても、次の支援者に引き継ぐことができた時、福祉のありがたさを実感します。一方で、Aさんのような人が途絶えず現れるのは、なぜなのか。いつも考えさせられます。
(民医連新聞 第1705号 2019年12月2日)