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民医連新聞

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診察室から 鍼灸治療で人生100年時代を

 平均寿命はどんどん延び、近い将来「人生100年」の時代が訪れるそうです。そんな時代に私がひそかに目標にしていることがあります。それは、自分が診ている患者で「100歳を超える人をいかに増やすか」です。
 現在、私が診ている患者の中で最高齢は105歳の男性Aさん。103歳まで元気で外来通院を続けていましたが、104歳で施設に入所し、通院できなくなったため、訪問診療を開始しました。Aさんは施設入所後に食思不振となり、低栄養状態が続き、両下肢の浮腫が悪化しました。入所前は車いすを自操していましたが、体力が低下し、ほとんど寝たきりに。経口摂取はわずかしかできず、内服薬の服用も困難、注射で利尿薬を使用すると効きすぎ、脱水状態が悪化してしまいました。
 ここまで来ると、年齢的にも病状的にも、「老衰」という位置づけとなり、「看取り」を覚悟した方針となるのが通常です。家族と面談し、Aさんの今後の治療方針について話し合いました。実は私は、看取り体制に入る前に提案したい治療法がありました。「鍼灸治療」です。家族は、「あと2カ月で105歳の誕生日。それを迎える可能性があるならば鍼灸治療を試してみたい」と望み、「鍼灸治療」を行うことにしました。
 それから、「Aさんを105歳にするためのたたかい」が始まりました。週1回、Aさんのもとに通い、食欲を増進し下肢の浮腫を改善するための経穴(ツボ)を選んだ鍼灸治療をくり返しました。すると、2週間ほどで効果が出て食欲が増進し、下肢浮腫も改善、ADLも元通り回復しみるみる元気になり、ついに105歳の誕生日を迎えることができました。
 鍼灸治療は漢方治療と並んで東洋医学の両翼をなす治療法です。どんな高齢者でも、内服薬が飲めなくても、体表からの刺激で治療できます。最近、私は超高齢者に鍼灸治療を活用することで、寿命を延ばすことを考えています。「人生100年」を超える人を、少し増やせるかもしれません。

(松岡角英、千葉・南浜診療所)

(民医連新聞 第1705号 2019年12月2日)

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