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民医連新聞

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高い使命感で人権を意識した発表 韓国社医連 第1回学術大会に参加して

 韓国の社会的医療機関連合会(社医連)は、10月20日、第1回学術大会を開催しました。特別講演の講師として参加した、全日本民医連副会長の根岸京田さんの報告です。

 韓国で社会的医療機関連合会(社医連)が発足して1年が経過し、加盟事業所は2病院、22診療所、13韓方診療所、8歯科、6薬局などに広がり、職員数は医師86人、韓方医26人、歯科医師21人、薬剤師12人、看護師266人など計1123人、そして利用者である組合員数は2万4208人となりました(いずれも2019年9月30日現在)。
 韓国では日本の地域包括ケアシステムを参考に「地域社会統合ケア(コミュニティーケア)」を整備しようと、第1回学術大会の特別講演として「日本の地域包括ケアシステムと訪問診療」について民医連に講師依頼があり、岸本啓介事務局長と訪問しました。

■国会前に数万人

 10月19日の全日本民医連理事会終了後ソウルに向かい、午後6時半ごろ到着。スケジュールを変更してもらい国会前集会の見学に行きました。ロウソク型のライトを持って国会前に集まった数万人の人びとが声高に叫んでいたのは「権力の座にあるものを調査するシステムをつくれ」ということ。人びとは検察の横暴さと権力者への捜査が恣意的に行われていることと、国会の無策に怒っていて、韓国の市民の政治意識の高さを生で実感する貴重な体験でした。

■5つのセッション

 翌日9時からソウル市役所地下のイベントスペースで学術大会が行われました。参加者は約100人で、医師の参加率が高い大会でした。プログラムは5つのセッションと2つの特別講演で構成され、各セッションはシンポジウム形式で行われました。
 セッション1のテーマは「一次医療(プライマリーケア)」です。「我が町30分クリニック」という発表では、外来診療時間を必ず30分とり、患者のあらゆる相談にのっているとのこと。診察できる患者数が限られるので、相談やカウンセリングに保険点数をつけてほしいと報告していました。
 セッション2のテーマは「訪問診療」です。訪問診療クリニックを開設している医師が、「貧しい人びとの医療は外来だけでは不十分で、訪問することで必要とされる最低限の医療が提供できる」と述べました。薬局も訪問活動を行っており、訪問薬料といいます。服薬管理やお薬カレンダーの工夫などが発表されていました。
 セッション3は「医療と人権について」です。以前、全日本民医連評議員会に招いたグリーン病院のイ・ボラ医師が「人権治癒センター」について発表。人権治癒センターとは、ハンガーストライキや座り込みをした労働者たちの医療支援をするチームです。長時間絶食した人は入院の上、特別な治療プログラムで管理します。座り込みの現場に往診を頼まれることもあり、高所に命綱をつけて往診したこともあるそうです。移民・外国人の診療についての報告もあり、グリーン病院には経済的に困難な外国人の医療費を支援する基金があります。
 その後に日本と韓国からの特別講演があり、セッション4は「学生の活動について」。日本に研修に来た経験のある韓国の医系学生が、全日本民医連での医師研修の報告を行い、すべての事業所に民医連綱領が掲げられていて、人権、無差別・平等が貫かれていると感想を述べていました。セッション5は「労働者の健康問題」でした。

■相互訪問の継続を

 全体を通して人権を意識した発表が多く、この間、韓国でとりくまれた人権教育の結果と思いました。高い使命感と意欲を感じる発表がほとんどでしたが、一方で、経済的基盤(診療報酬)が未整備の中、医師の個人的な努力にささえられている部分が大きいと思います。
 今後とも、お互いをリスペクトしつつ、特に若い職員の相互訪問と交流を続けていく必要があると思います。参加者の年齢層がとても若く熱意にあふれていることもあって、「民医連の草創期、1970年代はこんな雰囲気だったのかな」と思いつつ、ソウルを後にしました。

(民医連新聞 第1705号 2019年12月2日)