日本で働く外国人 ~SNS相談室から~ (17)やさしい日本語 文・写真/榑松 佐一
みなさん、通訳と聞くと外国語をペラペラと話せる人を思い浮かべると思います。確かに通訳は語学に長けていて、日本語を外国語に、外国語を日本語に正しく翻訳してくれます。
医師の診断を正確に患者に伝え、患者の声を医師、看護師に伝えることはとても重要です。医療関係者同士の通訳ならば、医療用語もそのまま伝えることが必要です。しかし、これが言葉も習慣も違う外国人の患者さんの場合には、そう簡単ではありません。通訳の基本は何も足さない、引かないで意味を正確に伝えることです。通訳の意見を入れず、患者に伝えることが医療通訳者に求められます。
医療だけではありません。相談を受ける際にも、相手の立場や違いを理解して通訳することが求められます。これをコミュニティー通訳と言っています。
外国人の中にはさまざまな日本語レベルがあります。近年は多国籍化してきているので、通訳に必要な言語も一気に増えました。以前は英語と中国語が主でしたが、中南米の日系人が増えるとポルトガル語やスペイン語が必要になりました。今ではカンボジア、ミャンマー、ネパールやブータンなど何語を話したらいいのかわかりません。
そこで、さまざまな母国語の外国人が来る日本語学校では、「やさしい日本語」を共通語として教えるようになってきました。例えば「緊急避難」は「すぐ、にげる」です。必ずしも正しい日本語ではありませんが、意味は伝わります。医療現場ではどうでしょうか。診断書、処置、採血など考えてみましょう。
やさしい日本語は緊急時だけではありません。困っている外国人に声をかけるときに使いましょう。「こんにちは、どうしたの?」「こまっている?」「おなかいたい?」そう声をかけることで、外国人は安心します。やさしい日本語はコミュケーションの入口です。(続く)
くれまつ・さいち 愛知県労働組合総連合議長、1956年生まれ。著書に『外国人実習生「SNS相談室」より―ニッポン最暗黒労働事情』など
(民医連新聞 第1705号 2019年12月2日)
- 記事関連ワード