これでばっちりニュースな言葉 増え続ける防衛予算をどう考える 安保破棄中央実行委員会 常任幹事 こたえる人 小泉 親司さん
安倍政権は、6年連続で5兆円を突破する防衛費を成立させ、来年度予算でも5兆3000億円超の防衛費概算要求を決定。日本の防衛のためになるのか、安保破棄中央実行委員会常任幹事の小泉親司さんの解説です。
防衛費は、5兆円超という“額面”だけではすまない軍備大増強予算です。防衛費の約半分以上は「物件費」という兵器購入などの予算ですが、ほとんどが「後年度負担」という後払い、つまり「借金」です。別表のように、現在その借金の総額は5兆3000億円にのぼっています。なんと計上された防衛費とほぼ同額の「借金」があるのです。
財務省の財政審議会は、このまま防衛費の増額がすすむと、「財政が硬直化する」と指摘。「借金」払いに追われ、福祉や医療にお金が回らなくなると警告しています。
■米国に食われる血税
マスコミは、この防衛費増額について、「米国に食われる防衛費」(『週刊朝日』)と書きました。2019年度防衛予算には、アメリカ製の兵器を購入するFMS(外国軍事商取引)が7013億円含まれています。13年、安倍政権になってからFMSは4000億円台と、これまでの2倍になり、19年度にはその1・4倍になりました。この結果、防衛省中央調達のトップは三菱重工などの日本の防衛産業を押しのけて、「米国政府」となりました。「米国政府」といってもアメリカは軍産複合体なので、米国軍需産業の大もうけとなったのです。
トランプ米大統領は、首脳会談で訪日するたびに、アメリカの兵器を買えと圧力をかけてきましたが、4月の会談では「日本はF35の最大の購入国になった」と“高笑い”しました。いま防衛予算は、米軍需産業を肥え太らせるだけの「アメリカン・ファースト」予算となったのです。
■欠陥戦闘機の“爆買い”
防衛予算の大増額は、本当に「日本の防衛」のために必要なのでしょうか。
安倍政権は、北朝鮮のミサイルから日本を守るため「イージス・アショア」2基を6000億円で購入。FMSで1700億円の「先払い」をしました。「イージス・アショア」について、米戦略問題研究所は「米国をまもる地上イージス」「太平洋の盾・巨大なイージス艦としての日本」(18年5月)と報告書を発表しました。「日本を守る」ためではないのです。
安倍政権は、昨年末の防衛計画で、147機のF35をFMSで購入することを決定。日本の会計検査院にあたる米国政府監査院が966件の欠陥を指摘し、いまだ量産体制に入れないでいます。ところが安倍政権はこれを“爆買い”したのです。航空自衛隊幹部は、F35が大量導入されると「周辺国は日本を専守防衛の国とは信じなくなる」(朝日、18年4月23日付)と語っています。F35の“爆買い”は、自衛隊を「戦争する軍隊」に変え、アメリカといっしょに戦争する態勢を整えるためなのです。
■軍事費削ってくらしに
台風15号、19号の被害が拡大した中、文芸評論家の斎藤美奈子さんは「防衛と防災」というエッセイで「国の最大の責務が『国民の生命と財産を守ること』であるなら、国防以外に(中略)台風への備えが重要なはずである」「(防災予算が)防衛予算のたった半分。これ、逆じゃありません?」(東京新聞)と指摘。消費税増税の中、ムダな防衛予算が必要なのかとの世論は多数にのぼっています。防衛予算は、人や物を破壊する兵器購入のための軍事費です。F35の1機166億円があれば、特別養護老人ホームを900人分もつくれます。また、小中学校のエアコン設置は4000室もできます。
軍事費を国民のくらしにまわせば、お年寄りや子どもたちのいのちを守り、つなげることができます。「軍事費を削って、くらし・福祉にまわせ」の世論を大きく広げるときです。
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(民医連新聞 第1704号 2019年11月18日)