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民医連新聞

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物流をささえる現場働き方に「赤信号」! “トラックの日”に健康チェック 神奈川北央医療生協

 物流は私たちの暮らしに欠かせない要。その9割超をささえるのがトラックです。しかし、トラック業界は慢性的な人手不足なうえ、労働時間管理や社会保険などがずさんな会社も珍しくないなど、働く環境は過酷です。トラック運転手が加入する全日本建設交運一般労働組合(建交労)はトラックの日(10月9日)前後に、トラック運転手に労働実態を聞き取るとりくみを全国で行っています。神奈川北央医療生協は10年ほど前から行動に参加し、健康チェックをしています。(丸山聡子記者)

 朝から小雨がちらつく10月18日。神奈川県大和市にある東神トラックステーション(TS)に建交労神奈川県南支部の仲間が集まりました。TSとはトラック運転手が駐車・休憩できる場所。休憩所や食堂、入浴施設などを備えます。ナンバープレートには、札幌、岩手、水戸、三重、香川、熊本…と、全国の地名がずらり。

■残業代なし、高速代は自腹

 手分けして、休憩しているドライバーに声をかけます。夜間に走行するため、運転席のカーテンを閉めて寝ている人がほとんど。
 山形ナンバーのトラックの男性は、「人手不足で乗る時間は増えたけど、給料はこの10年変わらない」と話します。残業代はなく、「1回の運行でいくら」という決まり。県南支部書記長の大島信雄さんは、「『基本給+運行手当』。という会社が多く、時間通りに届けるために早く出たり、渋滞で長時間運転しても、残業代は出ない。給与明細に『残業代』の欄がないケースも多い」と言います。
 東京都内のナンバーの2トントラックの男性(50代)は「アルバイトで日当8000円」。これから都内の会社に戻り、休憩して夕方から別の荷物を積み、翌日午前2時に出発すると言います。大島さんは「東京都の最低賃金は時給1013円。最賃違反の可能性が高い」と顔を曇らせます。
 大型機械を載せたトレーラーの運転手の男性(40代)は、四国から高速道路を使わずに2日かけて東京まで来ました。「会社に不満?不満しかないよ!」と声を荒らげます。給与は完全歩合制。高速道路は使えず、「睡眠時間がほしければ、自腹で高速代を払う」と言います。睡眠時間は3時間程度で「居眠りはしょっちゅう」。自宅で寝るのは月3、4日です。
 「給料はいいが車両保険は自分持ち、という会社もある。最近は、4時間走ったら30分休むという規制が厳しく言われるけど、トレーラーなどの大型車両は停めるところがない。だから事故も増える」と、運転手の男性は訴えます。健診はあるものの、身長、体重、血液検査、尿検査、問診程度のため、自費で人間ドックを受けていると話しました。

■長時間労働が健康むしばむ

 健康チェックは15人が受けました。内容は、血圧測定、体脂肪、貧血と尿のチェックです。ドライバー歴40年の男性(60)は、看護師の今井光子さんから「異常なし」と言われ、ホッとした様子。「前の会社では健診があったけど、その会社はつぶれ、今の会社は健診がない」とぼやきます。別の40代後半の男性は、「30代で脳卒中になった。トラックの仕事はきついけど、子どもが3人いるから働かないと…」と話しました。
 今井さんと組織部の加藤郁子さんは、「日頃から自分の健康について気をつけている人が多かった。健康チェックを避けていくような人こそ心配」と話します。「働く人たちの置かれている過酷な状況がよくわかる」と加藤さん。
 建交労全国トラック部会副部会長の中島均さんは、「トラック運転手の働き方は厚生労働大臣の改善基準告示で決められている。4時間走ったら30分休憩する、荷物を待つ時間は労働時間に含まれるなどと定められているが、あまりにも違反が多い」と指摘します。TSにトラックを停めて1週間も荷物を待っているという運転手もいました。このような場合、荷待ちの時間は無給で、狭い運転席で寝泊まりすることも多いのです。
 医師と運輸にかかわる労働者は、働き方改革の長時間労働の改善から除外されました。中島さんは、「運転手で多いのが心臓疾患と脳疾患。背景には長時間労働がある。最近は、時間厳守のプレッシャーからうつ病なども多い。働き方のルールを、大臣告示ではなく法的根拠を持った法律として整備すべきだ」と話しました。
 この日は、日弁連の貧困問題対策本部から副本部長の猪俣正弁護士などが参加。過労死が多発し、違法な働き方が横行するトラック業界の実態を聞き取りました。

(民医連新聞 第1704号 2019年11月18日)