地域の実情無視する安倍政権 医療を受ける国民の権利守ろう いのちまもる国民集会に2500人超
10月17日、東京・日比谷野外音楽堂で「憲法・いのち・社会保障まもる10・17国民集会」が開かれました。時折冷たい雨粒が落ちる中、全国の医療機関、介護・福祉施設などで働く人や患者・利用者・家族など2500人超が参加。「いつでもどこでも誰でも医療や介護を受けられる社会に」「長時間労働をなくして、安心して働ける職場にしたい!」と声をあげました。(丸山聡子記者)
集会は、全日本民医連や全国保険医団体連合会(保団連)、日本医療労働組合連合会(医労連)など10団体でつくる実行委員会の主催で、毎年開催しています。
■勝つまで続ける
開会あいさつをした医労連の森田しのぶ委員長は冒頭、台風19号の被害を受けた人たちへのお見舞いと、救援活動にあたる人たちへの敬意を表明。政府がすすようとしている公的病院の統廃合や病床削減について、「地域の実情を考慮せず、地域医療を後退させるもの」と批判。「いつでもどこでも誰でも安心して医療を受けられることは、憲法に保障された国民の権利だ」と強調しました。
小説家でタレントの室井佑月さんが登壇し、医療労働者とトークショーをしました。自身の通院や親の入院の経験から、「医師や看護師を本当に頼りにしている。その人たちが健康でないと困るし、そのためには働く環境を守らないといけない」と発言。また、憲法や政治について積極的に発言していることを問われると、「今の安倍政権は、一言で言うと『なんじゃ、こりゃ!』。質問には逃げるし、まともに答えない。憲法は権力者を縛るもの。破廉恥にも権力を私物化している安倍政権に、憲法を変えさせてはいけないと思う」と答えました。最後に、「絶対にあきらめないことが大事。勝つまで続けていれば、最後は勝つんです。正しいのはこっち!」とエールを送りました。
日本共産党の田村智子参院議員と倉林明子参院議員(看護師、元民医連職員)、立憲民主党の初鹿明博衆院議員があいさつ。日本医師会、日本歯科医師会の両会長のメッセージも紹介されました。
■お金で差別するのはダメ
医療・介護の現場から5人がリレートーク。社会福祉施設経営者同友会の茂木範宏さんは、社会福祉施設に営利企業が参入し、競争が激化し、倒産や身売りが横行、小規模施設が淘汰(とうた)される実態を告発。「憲法にもとづく権利を保障する営みである社会福祉は金儲けではなく、生産性とは相容れない」と訴えました。
保団連の竹田智雄さんは、「自分が診ている患者は高血圧で定期通院していたが、家族の病気で自分の治療は中断、真夏の暑い日に脳梗塞になり、半身不随になった。負担の引き下げは切実な願いだ」と強調しました。
台風19号の被害が出ている長野から参加した東信医療生協の高見澤伸也さん(介護職)は、「決壊した千曲川の近くの介護施設では、夜勤の3人が恐怖とたたかいながら利用者を守り抜いた。災害の時に利用者を守り切れないような少ない夜勤配置基準こそ問題。介護報酬は責任に見合わない低さ。介護職がいないと地域の医療・介護は守れないことを訴えていきたい」と話しました。
「台風15号被害の地域で救急基幹センターを担う病院だが、老朽化で病棟を閉鎖し、余剰と判断された看護師は退職に追い込まれた」(千葉・吉井さと子さん=看護師)、「国保アンケート382人の声から、高すぎる保険料や窓口負担金が払えず受診抑制する実態が明らかになった。お金でいのちが差別されてはならない」(東京・大日向いずみさん=看護師)などの発言が続きました。
■生活ささえる制度を
集会後、参加者は銀座までパレード。岐阜・みどり病院の中島志保さん(看護師)は同僚7人と白衣を着て参加。医療や介護の負担が増え、患者の家族が背負いきれないケースが多いと言います。「家に帰りたくても、費用が払えないために必要なサービスを入れられなかったり、施設に入りたくても行き先がなかったり、結局、病院にとどまる患者もいます。在宅生活をささえる制度が整っていない」と話していました。
集会後、実行委員会は厚労省を訪れ、社会保障の拡充を求める要請書を自見英子政務官に提出。地域の実情を無視した病床削減や医療機関統廃合の中止、診療報酬の引き上げ、医療・福祉職員の大幅増員などを求めました。
(民医連新聞 第1703号 2019年11月4日)