相談室日誌 連載471 在日の外国人は利用しづらい 日本の社会保障制度の再検討を(石川)
Aさん(40代、女性)は20代で日本人男性と国際結婚し、来日しました。来日後に長女・長男を出産し、英語の講師をしながら子育てをしてきました。生活は苦しかったものの、娘も結婚し、ひと安心した矢先、Aさんは脳梗塞を発症。後遺障害として右片麻痺と失語症が残り、仕事ができなくなりました。そんな中、夫ががんで他界。貯金を崩しながら介護保険サービスを利用し、10代の息子とふたり暮らしをしていましたが、次第に困窮し、ADLも低下。在宅生活が困難となり、担当のケアマネジャーが無料低額老健事業を実施している当施設を紹介し、入所となりました。
すぐに経済基盤を整えるための支援を開始。Aさんは遺族年金と障害年金の受給権がありましたが手続きしていませんでした。まず、年金額が多い遺族年金の請求の支援にとりかかりました。しかし、Aさんは海外で婚姻手続きをしていたので、日本では夫との婚姻関係を証明する書類が取得できず、国際的な手続きが必要で、費用や時間がかかることが判明しました。そこで遺族年金とともに障害年金の請求の手続きも同時にすすめることにしました。障害年金の手続きでも、外国人であることを証明するため法務省への開示請求が必要となり、時間はかかりましたが、なんとか申請できました。
経済基盤が整いつつあったため、在宅生活に向けて自宅を訪問したところ、自宅のテーブルに書類が山積みになっていました。もともと日本語が流暢(りゅうちょう)ではなかったAさんでしたが、失語症も加わり、自治体から届く書類などの理解ができず、夫が他界した後は、税金や保険料を滞納していたようでした。保険料などについては自治体と分納の相談をし、現在、在宅生活に戻るための支援をひとつずつすすめています。
Aさんの支援を通して、日本に住む外国人がいかに日本の社会保障制度を利用しづらいかを実感しました。入管法改正で日本に住む外国人がますます増えると予想される中、誰もが利用しやすい社会保障制度への再検討が必要です。
(民医連新聞 第1700号 2019年9月16日)