日本で働く外国人 ~SNS相談室から~ (8)研修生から技能実習生へ 文・写真/榑松 佐一
外国人研修制度は、海外からの輸入に苦しむ繊維産業の救済策として90年代に始まりました。研修制度は日本の優れた技能を海外に移転する国際貢献を名目としました。入国手続きをしたことのない中小企業での受け入れを可能とするために、事業協同組合などの非営利団体が受け入れ機関となっています(団体監理型)。母国で登録した送り出し機関を通じてしか来日できません(図)。しかし非営利とは名ばかりで、ピンハネや書類にないブローカーが入り込んでいます。
2000年代には縫製業から自動車産業に広がりました。労働者派遣法が製造業に解禁された時期です。自動車産業は輸出に重点を移し毎年単価を引き下げました。その下請け企業に対して「中国人は300円、ベトナム人は400円」という営業がまかり通っていました。しかし1年目の研修生には最低賃金が適用されないため、労基署に訴えても相手にしてもらえません。不正の摘発に備えて組合をいくつもつくり、同じ事務所に3つも4つも受け入れ団体を登録。研修生が逃げないように高額な保証金をとり、パスポートと貯金通帳を会社が取り上げていました。私が07年に初めてトヨタの下請けの研修生から相談を受けたのはそんな時でした。事件が相次ぐ中、09年に入管法が改正(10年施行)され、1年目から技能実習生として労働法が適用されました。
2010年代になると団塊の世代が定年となり労働力不足になります。さまざまな分野で実習生が増え、当時13万人だったものが18年には30万人を超えました。10年前は大半が中国人でしたがベトナム、インドネシアと増えていき、今ではミャンマー、カンボジア、ブータンからも実習生が来ています。
失踪者は毎年1000人増え、難民申請が相次ぐなど問題も多発する中、16年に技能実習法が制定され17年11月から施行されました。(続く)
くれまつ・さいち 愛知県労働組合総連合議長、1956年生まれ。著書に『外国人実習生「SNS相談室」より―ニッポン最暗黒労働事情』など
(民医連新聞 第1696号 2019年7月15日)
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