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民医連新聞

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署名を広げて 誰もが安心して治療を 北海道勤労者歯科医療協会

 6月4~10日は歯と口の健康週間です。全日本民医連も参加する「保険で良い歯科医療を」全国連絡会は6月6日、「保険でより良い歯科医療を求める6・6歯科総決起集会」を国会内で行い、330人が参加。経済的事由による治療中断は、医科診療所で34・9%、歯科診療所では51・7%の人が経験しています(2016年、保団連調査)。民医連で20万筆が目標の「保険でより良い歯科医療」を求める署名。このとりくみや『歯科酷書第3弾』の活用などについて、北海道・勤医協ふしこ歯科診療所、きたく歯科診療所を取材しました。(長野典右記者)

■前歯1本1万円?!

 5月29日、札幌北・石狩健康友の会の四役会議の日。勤医協きたく歯科診療所所長の荻原宏志歯科医師は、窓口負担割合の引き下げや保険のきく歯科治療を増やすことなどを請願項目とした「保険でより良い歯科医療を」の署名を普及するため、講師として学習会をしました。
 「前歯が1本折れ、根の治療をし、かぶせものをすると、3割負担で1万円はかかります。複数本治すとかなりの負担になると思いませんか」という荻原さんの話に、参加者は真剣に聞き入ります。定期的な歯科検診を受けている人ほど医療費が少ないこと、収入が高い人ほど残存歯が多いこと、経済格差が健康格差につながっている、と説明しました。
 現在、2年に1度行っている署名運動は、1992年にNHKが「保険で良い入れ歯を」と取り上げたのがきっかけでした。民医連や保団連が中心になって全国連絡会を結成し、今年で28年目です。
 運動のひとつの転機は2006年の診療報酬改定でした。小泉政権が「聖域なき構造改革」の名で社会保障費を毎年2200億円削減。初・再診料の大幅な引き下げや、必要な処置が行えなくなる算定回数の制限など、保険診療を否定する改悪が行われました。
 その年から本格的な署名運動が始まり、その後、臼歯を白くできるCAD/CAM冠や口腔機能低下症の検査などが保険適用となりました。荻原さんが「17年には民医連で20万筆、全体では31万筆を超える署名を国会に提出するまでに運動が成長しました。その影響はあると思います」と説明すると、参加者はうなずいていました。

■健康まつりでも署名集める

 参加者からは、「歯科の窓口負担を安くして」「インプラントも保険適用に」などの要望も出ました。同会会長の乙板昭さんは「地域から1000人が集まる6月の健康まつりで署名を訴えて、目標に応えたい」と語りました。
 北海道勤労者歯科医療協会では、「保険でより良い歯科医療を」の署名1万筆、1事業所2000筆の目標達成に向け、友の会新聞への折り込みや来院者への訴え、定期健診で来院する患者には事前に署名用紙を郵送するなど奮闘しています。菅原健太事務長は「日常的な署名活動とあわせ、北海道内の自治体へのキャラバン行動に職員が参加しています。そこで陳情し、市町村議会で意見書が採択されたこともあります」と説明。協力を呼びかけました。

地域の困難事例発信していきたい

■技工士の労働環境の改善も

 「長時間労働で低賃金の歯科技工士の労働環境の改善も急務」と、署名の意義を語るのは、勤医協札幌ふしこ歯科診療所の歯科技工士の塚田大助さん。過去には毎年3000人近い国家試験合格者がいた歯科技工士ですが、09年には1431人と半減、19年には798人と、毎年合格者が減少しています。また、厳しい労働環境から卒後5年で約8割の歯科技工士が離職してしまいます。業界全体の「成り手不足」と「高齢化」から数年後には技工物(被せ物や入れ歯)の安定供給が難しくなると懸念されています。「請願項目にもある、歯科医療の充実に国の責任で必要な費用を確保することが、私たちの要求」と言います。

■全身につながる口腔の健康

 現在、「子どもの歯科矯正に保険適用を求める請願署名」もあわせて行われています。例えばイギリスでは一定の要件を満たすと保険適用されます。この運動の起点となった山梨県では、11市町村で意見書を採択しています。
 「どちらの署名も、治療の必要があると判断されたとき等しく必要な治療が受けられる制度にしてほしい、という思いが根底にあります。全身の健康に影響を及ぼす口腔の健康を守るために、多くの署名を集めて国会に提出し、歯科保険医療制度の改善を訴えたい」と、荻原宏志さんは語ります。
 6月6日に行われた国会議員要請と民医連歯科署名キックオフ集会には、勤医協札幌にしく歯科の山本早紀さん(歯科衛生士)の姿がありました。昨年9月に正職員になった山本さんは歯科部で作成した「保険でより良い学習ビデオ2019」をもう一度見て参加。口の中を診ることで患者の社会的背景に注目する民医連の姿勢を日々学んでいます。
 北海道の地方議会での意見書は179自治体のうち52で採択されています。山本さんは「地域にアンテナをはって困難事例を把握し、歯科医療改善のために意見書採択の普及と署名をすすめたい」と抱負を語りました。

(民医連新聞 第1694号 2019年6月17日)