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民医連新聞

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相談室日誌 連載465 生活保護の申請を受理せず 先に受診させる指導が増加(岐阜)

 妻と2人暮らしをしていたAさん(男性60代前半)は2年前から住み込みのトラック会社に就職しました。50代でうつ的になったAさんは安定して働けず、前年に自己破産して自宅を手放したばかりでした。ここが最後の就職先と張り切っていたAさんですが、次第に社長が社員を怒鳴りつけたり、給料をきちんと払わないブラック企業だとわかってきました。
 日常的なパワハラが続き、ついにAさんは出社できなくなりました。体重が10kg以上減り、死にたいと自分を傷つけようとするため、妻も仕事を退職。息子からの支援も限界になり、生活保護の相談に行きましたが、「受診しないと何もわからない」「妻がダブルワークすればいいのでは」などと言われ、取り合ってもらえませんでした。保険証がなく受診もできずにいましたが、無料低額診療の話を聞き、みどり病院を受診。うつ病の診断を受け、生活保護の申請につながりました。
 治療が始まり、少しずつ回復して笑顔も見られるようになったAさんでしたが、行政から妻への執拗な就労指導が続いていました。「夫をデイサービスに行かせて、働きに出られないのか」と介護保険の申請を勧められたり、Aさんの手術のため妻が仕事の面接に行けなかったことに対して「生活保護を受けるようになったから働かなくていいと考えているのか」と言われるなど、心ない指導を受けていました。妻の相談にのる人が必要と考え、包括支援センターへ連絡し、間に入ってもらうことで、過剰な就労指導にストップをかけることができました。
 近年、Aさんのように行政からの紹介で精神科を受診する人が増えています。「就労できるか診断してもらうように言われた」と。生活困窮に至る原因はさまざまです。就労指導の前に、まずは生活保護で生活を安定させることが必要ですし、働いて、収入を得れば解決する問題ばかりではありません。その人の生活全体を見据えた支援がなされているか、常に目を配ることがソーシャルワーカーの大切な役割です。

(民医連新聞 第1693号 2019年6月3日)