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民医連新聞

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診察室から やりたいことをやれるうちに

 前回は経営危機について、当事者としてありのままの話をさせてもらいました。その借金返済に追われて気がつけば今年還暦になります。3人の子どもたちは、いろいろありましたが無事に巣立って行き、気がつけば妻と2人です。
 この間、兄や父が亡くなり、葬式や49日、1周忌など死後にまつわる行事を、当事者として初めて経験しました。医師という職業に従事しているので、人の死は嫌でも経験していくわけですが、実際に遺体が火葬場で灰になる様をみると、今更ながら命のはかなさを感じます。やっぱり生きているうちにやりたいことはやっておいたほうがいいと再認識します。
 現在、田舎で1人暮らしの母が、親戚や近所の人に助けられながら生活しています。88歳と高齢ではありますが、自宅の隣の小さな畑で野菜をつくったりと、比較的元気です。月に1~2回、様子を見に帰ると、普段会話する機会が少ないのかどうかわかりませんが、よくしゃべります。記憶があいまいになっていて、時々あることないこと話す癖があり、どこまで本当の話かわからないので、適当に相づちを打って、聞いているフリをしています。私が田舎の実家から帰る時には、いつまでも手を振って見送ってくれます。いくつになっても、母と子の関係なんだなと再認識させられます。
 最近特に感じるのは、いつも家と病院の往復だけで、身の回りのことを妻にやってもらい、自分では何一つできないということです。これから、お互いに歳をとるわけですので、いつまでも自分のことができないのでは、将来困ることは目に見えています。外来の診察室でも、中高年女性の患者さんと話す時には、病気の話をすることよりも夫や姑(しゅうと)に対する愚痴や不満をよく耳にし、老後に備えて耳学問しています。料理をすることは嫌いではないので、そろそろ少しずつできるところからやってみようと思っています。もちろん悪友との趣味のゴルフも、やりたいと思う間は、できる限り続けたいと思っています。

(小野川高弘、高知生協病院・院長)

(民医連新聞 第1693号 2019年6月3日)