日本で働く外国人 ~SNS相談室から~ (5)失踪者の急増 文・写真/榑松 佐一
昨年の臨時国会では外国人実習生の失踪が大きな問題になりました。この5年間に失踪者が毎年1000人ずつ増え、昨年は9000人が逃げています。国は失踪理由の大半が「より高い賃金を求めて」だと説明していますが、そのなかに契約と違う賃金や、不当なピンはねなど不正が多いことについては、全く触れられていませんでした。
■建設と農業が2倍
私のところへも、逃げた実習生から相談が入ってくるようになりました。その多くが建設業でした。極端に賃金の少ない月があったり、割り増し賃金が払われていないことがありました。下請の土木作業員として働くことが多く、公共事業の少ない月、雨が降ったら休みで、仕事がないと給料が支払われません。引かれるものは毎月同じなので手取り2万円台のこともありました。
2016年7月、議員へのレクチャーの場で法務省、国交省にそのことを聞きましたが、国交省は「そのような統計はない」と答えました。当時の失踪届には職種欄がなかったのです。ところが法務省はその直後の9月から職種別統計を開始。その結果、建設業と農業で失踪者の半分以上を占め、失踪率は全職種平均の2倍以上となっていました。
■暴力、労災事故も
建設業や農業では言葉が通じない外国人に暴力をふるうことも少なくありません。「大家さんが、自分が日本語ができないので殴った。腹をけられた」(茨城、農業)、「先生、ちょっとうちの組合に訴えてもらいたいですが、罵(ののし)るや殴るもう受けたくない」(埼玉、建設業)。
昨年5月には大けがで入院している写真が送られてきました。徳島の産業廃棄処理業者で、社長の運転するショベルカーをぶつけられたのです。徳島労働局と労基署が調査し、会社に労災手続きを指導。実習職種でも不正があり、ほかの実習生は失踪していました。実習生たちは会社を代わり、この会社は今年5月に労働安全衛生法違反で書類送検されました。(続く)
くれまつ・さいち 愛知県労働組合総連合議長、1956年生まれ。著書に『外国人実習生「SNS相談室」より―ニッポン最暗黒労働事情』など
(民医連新聞 第1693号 2019年6月3日)
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