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民医連新聞

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高すぎる国保料(税) 3割が“通院控える” 国保アンケート538人の声 滋賀民医連

 全国で国民健康保険料(税)の値上げが止まりません。国保の運営主体が市町村から都道府県に移り、国の指導で県が「標準保険料」を決定したためです。平均で年4万9000円の値上げとの試算も。各地で国保アンケートがとりくまれる中、4つの診療所で538人の声を集めた滋賀民医連を訪ねました。(丸山聡子記者)

 「これまで私たちは、特に低所得の人たちの医療を守ろうと活動してきました。しかし、アンケートの結果からは、低所得の人だけではなく、いわゆる“中流”層で、これまでは保険料を払ってきた人たちが困窮し、保険料すら払えなくなってきている実態が見えてきました」。アンケートのとりまとめをした藤岡孝之さん(滋賀民医連事務局次長)は言います。

■病院に行くのが怖い

 「これからは風邪もひけんなぁ」。奥村昭夫さん(64)は、そう言ってため息をつきました。昨年度までは協会けんぽでしたが、4月から国民健康保険に加入。3月までの保険料は、本人と扶養家族2人(妻、三男)で月約2万5000円。3月末で三男は世帯分離し、国保は自分と妻の2人ですが、月額2万6000円~3万円程度になると試算しています。
 収入は、夫婦の年金が月18万円余と、奥村さんが週2回、障害者施設で夜勤のパートをして稼いだ8万円ほど。合わせて約25~27万円です。「収入の1割以上が国保料でとられる」と奥村さん。
 のしかかるのは国保料だけではありません。妻の母(90代)が暮らす山形まで夫婦で往復すると、1回で10万円を超えます。老後を考えるとローンの支払いの負担が重くなり、数年前に持ち家を処分し市営住宅で暮らしています。
 「年金18万円ならええやん、と言われるけど、夫婦2人が健康な今でも生活はギリギリ。貯金を切り崩すこともある」と奥村さん。白内障の手術では5万円かかりました。「これだけ保険料を払っていても、実際に病院に行けば、さらにお金がかかる。窓口でいくらかかるか不安で、病院に行くのが怖い」と訴えます。

■年収の1割を超える

 滋賀県では今年1月、2019年度の市町の国保料基準額が提示され、それによると1町を除く全てが値上げ、10%を超える値上げが示された自治体もあります。所得300万円の4人世帯(夫婦と子ども2人)の場合、例えば大津市だと3万8307円の値上げで年額46万円となり、年収の1割以上の国保料(税)です。
 この事態を深刻に受け止めた滋賀民医連は緊急にアンケートにとりくみ、2月の1カ月間で民医連の4つの診療所(膳所、坂本民主、こびらい生協、こうせい駅前)を受診した国保の患者538人から回答を得ました。国保の都道府県単位化について「知っている」は32・2%で、67・8%が「知らない」との回答。18年度の国保料(税)について「値上がりした」は26・2%で、「ほぼ変わらない」「知らない」で7割を超えました。昨年度は値上げを見送った自治体も多かったことが影響していると見られます。
 一方で、国保料(税)について普段感じていること(複数回答)では、「年々高くなり、負担を感じる」(52・3%)、「これ以上の負担はできない」(29・2%)、「日々の暮らしを圧迫している」(17・8%)と続きました。医療費の窓口負担や国保料(税)の支払いでお金がかかるためにしている工夫としてもっとも多かった回答は、「特に重い症状の時に限って病院に行くようにしている」で、3割を超えました(グラフ)。
 坂本民主診療所の所長で県連会長の今村浩医師は、「現在、通院している患者さんの中でも3割が日常的に通院を控えていると知り、衝撃を受けた。普段、通院していない人では、さらに増えるだろう。私たちが考えていた以上に、保険料や窓口負担の重さを理由に医療にかかりにくくなっていることを痛感した。値上げ中止を強く求めていきたい」と語ります。

国は国保制度ささえる財源の投入を

 今回のアンケートの結果を受け、膳所診療所所長の東昌子医師は、「当診療所で全身管理をしている患者さんの中でも、検査を渋る患者さんがいます。アンケートの結果から、背景には金銭的な問題があったのかもとあらためて気づきました」と言います。
 統合失調症と糖尿病を抱える60代の女性は、以前から受診が途絶えがちでした。その理由として「お金がない」ことが分かり、無料低額診療事業を利用して定期通院ができるようになりました。それでもなかなか改善しないので、自宅を訪問することに。すると、重度の糖尿病で、すでに足の壊疽が始まっている兄がいることがわかりました。話を聞くと、「窓口負担が心配で、30年以上病院にかかったことがなかった」と語りました。その後、生活保護の利用につながりました。
 「国保の患者さんで、経済的のみならず、障害や疾病、家族の問題など複数の問題が重なっているケースが目立ちます」と東さん。

■節約生活、もう限界

 藤堂ぎいちさん(仮名・74)は長年にわたり、実母と妻の2人を介護してきました。妻は10年前に脳腫瘍の手術を受け、すぐに要介護5になりました。当時、藤堂さんは仕事もしており、利用限度額いっぱいの介護サービスでも足りず、全額自己負担でのサービスを追加し、月20万円以上の利用料を払ったこともあります。頼りの預金もとり崩し、将来への不安が募ります。
 実母を看取り、仕事も辞めましたが、自身も心臓などに疾患を抱え、無理はできません。介護も家事もこなす生活は10年以上となり、安売りのスーパーをはしごしたり、衣類は中古品や安い女性ものを利用して節約しています。「国保料の値上げと言われても、これ以上節約できない。要介護5の妻からも同じように国保料をとるのも納得できないし、それだけの高額の保険料をとるなら、安心して医療も介護も受けられるようにしてほしい」と強調します。
 東さんは、「医療費が上がったから国保料(税)も上げるしかないと宣伝されますが、国庫負担を削り続けていることが問題。国保は国民生活のベースとなるもの。国は国民の健康に責任を持ち、財源を投入してささえるべきです」と話しています。

(民医連新聞 第1692号 2019年5月20日)