相談室日誌 連載462 内縁ゆえにすすまぬ支援 患者の利益を最優先に(秋田)
仕事終わりに心肺停止となり救急搬送されてきたAさん(70代男性)。同居する女性Bさんがキーパーソンとなっていましたが、退院後の生活について面談した際、「収入が途絶えて、生活費や医療費の捻出は難しい」と訴えました。手には未払いの当院請求書が数枚…。
Bさんが生活費を得られる術はなく、生活保護の申請に同行しました。保護課の窓口で生活保護を申請したい旨を説明しましたが、その際にBさんは、自分が「内縁の妻」であることを告白しました。「言う機会を逃してしまった」とのことでしたが、申請も順調にはすすみません(内縁の妻より、Aさんの県外に住む実弟からの申請が優先されるため)。
ようやく資産調査が始まると、生命保険に加入していたことも判明。いったん生活保護申請は保留とし、生命保険給付金の申請を優先して行うことにしました。しかし、内縁の妻には生命保険給付の請求権はありません。手を尽くした結果、50万円の生命保険給付金が支給されることになりましたが、生命保険の支給決定の前に、保護開始決定の連絡がBさんに入っていたようです。そこで、給付金を生かすべく、さかのぼって生活保護は取り下げ、年金担保貸付や生活費に充てることを考えましたが、Bさんに説明をしても理解が得られませんでした。「オムツ代の負担が月に3万円程あるが、もう少し負担を軽くしたい」ということしか頭の中になく、生活保護は取り下げずに給付金を保護課に返納する形になりました。結果として、 最低生活費に満たない保護費で生活していくことになりました。
年金担保貸付は、2022年3月に制度の廃止が決まっています。Bさんのように、十分な判断ができないまま安易に制度を利用し、困窮するというケースも少なくありません。また、内縁関係ゆえに不利益を被ることも多々あります。患者の権利を擁護しながら、患者が最大限の利益を受けられるように援助していく難しさを、あらためて実感したケースでした。
(民医連新聞 第1690号 2019年4月15日)
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