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民医連新聞

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医師は、差別のない地域のなかで育つ 第7次キューバ医療視察 国づくりの根幹に人づくり

 3月2~9日、全日本民医連は第7次キューバ医療視察を医師5人、歯科医師1人、看護師1人、薬剤師1人、医学生2人、事務3人、計13人の視察団で行いました。医療事情や生活の様子を、同医療視察団団長で全日本民医連副会長・増田剛さんが報告します。

 オバマ政権時代に若干融和がすすんだ米国との関係性が、米トランプ政権で再び冷え込み、さまざまな困難を目の当たりにすることになりましたが、全体としては、相も変わらぬ優れたプライマリケアシステムと国民の朗らかさに感動し、強い連帯を感じました。

■変わるキューバ

 ホテル建設のための重機が立ち並ぶ姿が非常に印象的でした。また、規制緩和で、外国人向けの民間宿泊施設やレストランが一気に増えていました。「キューバっぽくない」とも言える近代的でおしゃれな雰囲気を持つレストランで食事をしました。出てくる料理も伝統的な豆や肉を食材にしてはいますが、量や味付けはマイルドでスマートになった印象です。

■革命の体現者健在なり

 新しいキューバの中で、革命を継続発展させている体現者たちの健在にあらためて感服しました。
 初めて訪れた識字博物館で展示を説明してくれたルイサ・ヤラ・カンポス・ガヤルドさんは、1961年の1年間で一気に国民の識字率を引き上げた識字運動について熱く語りました。主人公は10代の若者、特に女性たちで、親元を離れ全国の農村部に寝泊まりして人びとに読み書きを教えて回った様子を豊富な資料をもとに報告。キューバが人づくりを国づくりの根幹に据え、医療と教育の完全な保障を重視したことを示す象徴的な出来事でした。
 現在キューバの識字率は世界最高水準で小学生の学力試験では中南米で群を抜いています。ICAP(キューバ諸国民友好協会)は、「キューバはモノ不足だが、人材こそが財産」と強調し、その理解が深まりました。
 ツアーの最後に訪問したパナマ連帯学校では28年校長を続けているエスティール・ラ・オチョアさんが衰えを見せぬバイタリティーで私たちを迎え、障害者のあり方はその国が何を大切にしているかを表している、と強調しました。第5回視察(2015年)の訪問時に下肢を使って髪をセットする訓練を受けていた両上肢のないダイリーンさんが、18歳の女性に成長し、私たちにダンスを披露してくれたことは、私自身にとって大感激のサプライズでした。

■この国の抱える課題を実感

 経済封鎖や二重経済の影響がさまざまな形で「よきキューバ」に影を落としつつあるように感じました。格差の顕在化、モノ不足、資源の流出など、「ポスト革命」世代にとっては享受しがたい現実が存在しているという実感です。過去の視察と比べて、スーパーの陳列棚には品薄が目立ちました。ポリクリニコの内視鏡室には日本製の「ファイバースコープ」が1本あり、医師が「撮影装置はないのでこの部分を覗いて所見を書く」と説明。優秀な人材を育てる一方で、モノ不足からより高度な医療サービスの提供に苦慮している様子を垣間見た瞬間でした。

■もらった宿題

 中南米やアフリカから学生を受け入れ、医師教育を行い本国へ帰すとりくみを20年間にわたり実践しているラテンアメリカ医科大学のビクトル・ディアズ・フェランさんは、「お金を稼ぐためでなく、心のきれいな医師を育てることが重要」と語り、「医療費が無料で差別のない地域の中でこそ医師は育つ」と強調しました。コロンビアから来た学生が、医師になったら祖国に帰って働きたいと明るく話していたことが印象的です。
 ICAP幹部は「私たちは必ず今の状況を乗り越えてみせる」と決意を述べた上で、「みなさんの協力が必要だ」と付け加えました。キューバの優れた実践を継続させるために民医連としてできることは一体何なのか? そんな宿題をもらった視察となりました。

(民医連新聞 第1690号 2019年4月15日)