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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 認知症利用者の生活改善 茨城・ヘルパーステーションかたくり  生活歴や活動を知り 在宅での自主性を高める

 茨城・ヘルパーステーションかたくりでは、認知症利用者にかかわる中で、いっしょに夕食をつくるなどして、生活意欲を改善してきました。第14回看護介護活動研究交流集会でのサービス提供責任者・平元久子さんの報告です。

 「寂しいよ。帰んないでよ」と毎日ベッドで寝ているAさん。当時、私たちが台所で夕食をつくり、ベッド脇まで運び食事を提供していました。しかし、Aさんを知り、かかわり方を見直したことで、台所でAさんといっしょに夕食をつくれるようになりました。
 Aさんは80代女性。要介護3、独居、既往歴はアルツハイマー型認知症、膝痛。日曜日は、市外在住の息子、または娘が対応、日曜日以外は介護サービスを毎日利用しています。障害高齢者の日常生活自立度はA2、認知症高齢者の日常生活自立度はIIbです。
 2年ほど前までは、「帰んないでよ」と庭まで追いかけてくるAさんでした。しかし膝の痛みや体調不良が顕著となり、ショートステイ利用をくりかえしているうちに、私たちは45分の派遣時間で、ベッドで寝ているAさんの姿しか見なくなりました。膝痛の訴えもあり、トイレに行くことがやっとで、台所に行くことはないと思いこんでいました。
 ところがある日、Aさんがジュースを持ち「冷蔵庫にあったよ」と話しかけてきました。トイレに行くこと以外にも自分で活動していることがわかり、かかわり方を間違えていたことに気づきました。そこで、Aさんがもっとできることはないか、とあらためて振り返ることにしました。

■いっしょに料理

 まず、センター方式(B2・D1・D2)で、私の生活史、できること、できないこと、わかること、わからないことを聞きました。すると、仏壇に手を合わせに行っていたこと、廊下のカーテンや障子を開け、外を眺めることがあったこと、かつては義母、義姉妹に料理をほめられていたことなど、新たに知ることができました。
 以前、Aさんが毎日当たり前にしていた家事をいっしょに行い、Aさんに決めてもらうことを確認し、かかわることにしました。
 最初に、台所にいっしょに行くように声かけをしました。すると、半月も経たないうちに「行ってみようかな」といっしょに調理をするようになりました。自ら布巾を持ち食器を拭きながらメニューを決めることもありました。2つの食材・食器を用意し、どちらがよいか聞くと、「その野菜はあまり好きじゃない」「その野菜は家でもつくっていたよ」「この器は小さいね」などの言葉が聞かれました。味をみてもらうと「ちょうどよい」「薄いかな」などの言葉も聞かれました。
 ほかにも、Aさんの体調をみながら、閉めきった障子を開け、外の景色をいっしょに眺めたり、話しながらいっしょに洗濯物をたたむなどを行いました。事業所に戻り、いっしょにおにぎりをつくったことや、「これくらいできますよ」などのAさんの言葉を、職員間で共有できました。
 センター方式を行い、Aさんの活動や生活歴を知ることができ、話題も増え、笑顔や言葉をたくさん引き出せました。台所で調理をしていると戸を開けのぞき込む姿や、私たちが台所に行く時、後をついて来ることもあり、自主性にもつながりました。Aさんの一言に気づき、かかわり方を変えたことで、帰り際「今からどこへ行くの? 大変だね」の言葉が聞かれ、「寂しいよ。帰んないでよ」の言葉が聞かれなくなったことは、Aさんの不安の軽減と意欲につながった結果と考えます。

■生活意欲につなげる

 利用者の一番身近にいる私たちのかかわり方次第で、生活への意欲や自主性を高め、在宅生活の継続につなげることができます。しかし、やり過ぎてしまうなど、かかわり方を間違えると、自宅での生活をできなくさせてしまう、とあらためて感じました。
 これからも、利用者の生活歴や習慣・活動などを知ること、また利用者のささいな言葉や行動からの気づきを大切にし、利用者一人ひとりの意欲につなげられるように、職員全員でかかわっていきたいと思います。

(民医連新聞 第1689号 2019年4月1日)