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民医連新聞

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夜の街 さまよう 少女たち 安心できる 衣食住届けたい Colabo代表 仁藤 夢乃さん

 「少女たちの伴走者に―」。一般社団法人Colabo (コラボ)は2011年に誕生しました。すべての少女が衣食住とつながり、暴力を受けず、搾取されない社会をめざしています。昨年は約370人の少女とかかわりました。代表の仁藤夢乃さんに聞きました。(文・代田夏未)

■JKビジネスよりも早く

 家や学校に居場所がなく、毎晩、新宿や渋谷の街をさまよう女子中高生たち。彼女たちに声をかけるスカウトは常時100人ほどいます。少女たちがSNSで「泊めてくれる人を探しています」と発信すると、10分ほどで20人もの男性が連絡をしてきます。
 こうした子どもたちはこれまで、「家出少女」「非行少年」と呼ばれ、問題視されてきました。「何でそんな人について行くんだ」「自分を大切にしなさい」と責める声さえあります。そんな彼女たちに「君の気持ちわかるよ」と言葉たくみに近づき、食べ物や寝る場所を提供しているのが、JK(女子高生)ビジネス業者たちだ、という現実があります。
 困っている子どもたちが支援につながる前に危険に取り込まれています。公的機関で子どもたちにアウトリーチするのは警察の補導だけ。しかし子どもたちにとっては“捕まる”こと。親や学校に連絡され、ますます居場所をなくしてしまう。だから逃げるのです。
 そこで、JKビジネスより早く子どもたちが安全な居場所や安心できる大人とつながれるように、Colaboを立ち上げ、中高生世代をささえる活動を始めました。

■安心していられる場所

 以前は街で少女たちに声をかけ、相談にのったり食事を提供したり、宿泊や自立の支援をしていました。しかし、声をかけると警戒されることも多いのです。もっと幅広く少女たちとつながるにはどうしたらいいか。そんな時、韓国で青少年をささえるバスのとりくみを知りました。繁華街にバスを停め、食事や飲み物、日用品、充電器などを無料で提供していました。
 この活動を参考に、昨年10月からピンクのバスが目印の「Tsubomi (つぼみ)カフェ」を始めました。10代の女子限定の無料カフェです。声をかける際にはTsubomiカフェのカードを渡しています。カードの裏側は鏡。チラシやティッシュのように捨てられることなく、長く使ってもらえるように工夫しました。QRコードでLINEなどに登録してもらうと、Tsubomiカフェの場所や活動などのお知らせが届きます。
 カフェは“相談するところ”ではありません。「助けるよ」と支援を前面に出すと、信頼できる大人に会ったことのない少女はかえって近寄りません。そのままを受け入れ、問題解決や相談を目的としない場所をめざしています。
 Colaboのスタッフ内でも「相談できる場所にした方がいい」という意見もありました。しかし、子どもたちは相談したくて来るのではなく、居場所を求めているだけ。自分が困っていると感じていない場合もあります。安心できる場所や人間関係をつくることを第一に考え、SOSがあったら支援する、というスタンスです。
 昨年から、東京都の「若年被害女性支援モデル事業」を始めました。行政にも彼女たちの実態を知ってもらい、本格的な支援にとりくんでほしいと思ったからです。少女たちのことを「把握していない」と言っていた行政も、今では私たちの活動を「評価する」と変化してきました。しかし、その後の支援の選択肢は少なく、自立援助ホームは2~3カ月待ちなど、課題はたくさんあります。

■いっしょに道をつくる大人を

 私は高校時代、家や学校に居場所がなく、ひと月の25日ほどを渋谷で過ごす「難民高校生」でした。高校を中退し「このままでは生活できない」と悩んでいた時に声をかけてくるのは性風俗業者か、危険な仕事を斡旋(あっせん)する大人だけ…。その後、信頼できる大人との出会いが私の人生を変えました。
 「次の世代に同じ思いをさせたくない」という気持ちで活動しています。少女たちが問題なのではなく、大人の問題です。レールに合うような支援ではダメ。いっしょに道をつくってくれる大人を子どもたちは必要としています。
 具合が悪かったら病院に行く。それが当たり前ではない子どもたちもたくさんいます。「なんでそんなことしたの」ではなく、子どもたちの背景まで見て、「困ったことがあればおいで」と声をかけ、いっしょに道をつくる―。そんな医療機関も必要です。


にとう・ゆめの 1989年生まれ。中学生の頃から街をさまよう。高校中退後、信頼できる大人と出会い、社会活動を始める。2009年、明治学院大学社会学部社会学科に進学。11年にColaboを立ち上げ、15年から、第30期東京都青少年問題協議会委員も務める。

(民医連新聞 第1689号 2019年4月1日)

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