相談室日誌 連載460 どこまでかかわり どうすれば救えたのか(福岡)
ときどき院内の他のスタッフから「そこまで、病院がやらなければならないんですか」「SWは、患者さんに対してやり過ぎじゃないですか」と言われます。私は「身近に親族や友だちもいない人たちの暮らしや治療の問題は、誰が担当するのだろう」と自問自答します。
年末年始に担当する患者が2人続けて孤独死しました。Aさんは60代の女性で、糖尿病の治療を中断してばかり。息子と知的障害がある孫と3人暮らしで、地域包括支援センターや児童相談所とも連携していました。息子からDV被害を受けていたAさんは度々家出し、親族に借金を重ねていました。11月初旬、また家出。地域包括支援センターと連絡をとりあい、息子も心配して何度か電話がありました。そして19日目、警察と息子から、昔住んでいた空き家で亡くなっていた、と連絡が。後でわかったことですが、数日ごとに遠方の弟のところに借金に行き、弟もいつものことだからと私たちに知らせていなかったそうです。もっと心配して、親族に電話して、近所を探していればAさんは今も生きていたのかもしれません。
Bさんは60代の男性、糖尿病でコントロール不良、医師や認定看護師の指導もうまくいかない人です。「冷蔵庫が壊れたから中古の安いのを探してよ」とか「下着がないからちょうだい」と相談室にきて、ゴミ屋敷に看護師と掃除にも行きました。年末の外来受診時に検査値が悪く入院をすすめましたが説得できず…。1月5日午後、外来看護師と2人で訪問。玄関が開いていたので入っていくと、テレビのついた部屋で既に亡くなっている状況でした。もっとお節介に年末訪問すればよかったと悔やまれます。
SWとして30年、今までにも何人かの孤独死に遭遇しました。「どうすれば、救えたのか、どこまでが病院の仕事なのか」とか「彼らを知っているひとり、個人としてどうだったのか」とか…答えはでません。「つながり」の大切さをよく知っているはずなのに、振り返れば、また、大切ないのちを見失ってしまいました。
(民医連新聞 第1688号 2019年3月18日)
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