ひめは今日も旅に出る(24)「たくさんのご縁に感謝」(最終回)
私にとって激動の1年だった2018年。月2回のエッセイ執筆を中心に、ちょっぴり緊張感のある毎日だった。ヘルパーさんとの日々のごはんづくり、旅支度、ケアプランの見直しや行政とのたたかい、揺れ動く体調の管理やもろもろの申請手続き。でもだからこそ、たくさんの出会いと学びに恵まれた日々だった。
多くのサポートのおかげで、大好きな旅行も楽しんだ。それぞれの場所で、再会したかった仲間たちと時間を共有することもかなった。3月、鴨川沿いに広がる満開の桜並木の土手を友と歩く。水芭蕉の群生地を散歩し、美味しいもの三昧の青森。宍道湖の夕陽と新緑映える松江。そして念願の満蒙開拓平和記念館や無言館へ訪れた夏の長野。初秋の古都で阿修羅像に癒やされた奈良。痰が絡んで10月に体調を崩したものの、最後は沖縄本島へ。楽しみにしていたモンパチフェスは大雨のため泣く泣く断念。キャンプシュワブに足を運び、美しい大浦湾と辺野古新基地をつくらせない不屈の人びとの姿を胸に刻んだ。
昨年1番のサプライズは、この連載エッセイがつないでくれたご縁。なんと長野のALS患者さんがわが家に来訪くださった。笑顔のすてきなマダムで、私と診断時期はほぼ同じ。思いがけない出会いにこちらが励まされ、胸が熱くなった。これまでがんばったご褒美のように思えた。
育ててもらった民医連と、ささえてくれた人たちへの恩返しのつもりで引き受けたこの連載。エッセイを通じて、社会性を保つことの重要性をあらためて実感した。全国の読者のみなさんからの反響やエールが、私の背中を押し続けてくれた。正直、最初は続けられるだろうかと不安だった。でも言葉をつづることで自分と向きあう時間にもなり、豊かな時間をもたらしてくれた。貴重な機会を与えていただき、感謝しかない。たくさんの人にありがとうと言いたい。どこかで誰かの1歩につながることを願って、明日も私は旅に出る。
文●そねともこ。1974年生まれ、岡山県在住。夫・長久啓太、猫2匹と暮らす。2016年、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断をうける。
(民医連新聞 第1688号 2019年3月18日)
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