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民医連新聞

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ひめは今日も旅に出る(23)「変わらないね、がほめ言葉」

 わが家に来訪する医療・介護スタッフの方々から「すごいですね!」とよく驚かれる。いままで出会ったことのない患者さんらしい。こんなによく旅に出かける患者は初めて、と主治医からも。お酒飲まれるんですか? とびっくりされたり。飲んでますけど何か? とは言えなかったけど。私は規格外のALS患者だろうか、と自問自答してみる。
 たしかに、難病ALSというフレームからみるとそうなのかもしれない。でも、私はそねともこというひとりの人間。歩んできた道がある。ALSになっても、自分の人生にわがままに生きてきた私は変わらない。というか、そう簡単に変われないのだ。古い友人たちは、変わらないね、ますます活発だねという。それを聞くとほっとする。私にとってうれしいほめ言葉だ。
 いまや汗も涙も、鼻水も痰も拭えない。かゆくてもかけない。腕や脚がしびれても1ミリも重力に逆らえない。最低限の要求だけでも、とどまることなく湧いてくる。それでも、要求も私らしくを貫きたい。例えば、周りの迷惑や苦労をかえりみることなく、どこそこの何が食べたい、これがほしいとキッパリ主張する。なんでもいいとは決して言わない。私らしさを生き抜くことが、生活への意欲やエネルギーにつながる。こうしたい、ああしたいと思い描くこと。そしてその意欲を表現できること。遠慮なく要求を出すことのできる環境やまわりのサポートが大事だ。
 とにもかくにも安全第一を呪文のようにとなえる看護師さんたちから、今のシャワー入浴もリスクがあるから別の方法を考えないかと言われる。医療者としての立場は理解しながらも、こうやったらできないかな? と待ったをかける私。患者という立場では、ついつい無難に、おとなしく生きることを強いられる。でも、私が人間らしく自分らしく生活することをあきらめさせないでほしい、とも思う。ALS患者のそねともこではなく、私はわたしなのだ。


文●そねともこ。1974年生まれ、岡山県在住。夫・長久啓太、猫2匹と暮らす。2016年、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断をうける。

(民医連新聞 第1687号 2019年3月4日)