フォーカス 私たちの実践 在宅用非侵襲的陽圧換気療法の再導入 宮崎生協病院 家族、医療チームの連携で 継続的な支援
宮崎生協病院では、一度断念した在宅用非侵襲的陽圧換気療法の再導入にとりくみました。第14回看護介護活動研究交流集会での看護師・中村允咲さんの報告です。
在宅における非侵襲的陽圧換気療法(以下、NPPV)の患者が増加傾向になっています。NPPVは生命予後、生活の質の改善はあるものの、マスクの不快感や口渇感などの苦痛もあり、導入は困難です。NPPV導入の必要性がありながらも、前回の入院で拒否が強く導入困難だった患者に対し、再導入に向けた援助をチームでとりくみました。
【事例】Aさん 70代男性
慢性閉塞性肺疾患で、キーパーソンは妻。喫煙歴は53年間で、1日20本。性格は心配症、完璧主義、周囲との交流が多かった。現在、在宅酸素療法(以下、HOT)を使用中。ADLは要介護2、訪問看護・訪問リハビリを週に2回。HOT導入後、日常生活に制限ができ外出頻度が減少。自宅での生活範囲はベッド周辺。
【入院中の経過】
入院後、呼吸状態が悪化し、高度治療室(以下、HCU)に転棟。NPPVを装着するがパニックとなり鎮静下で治療。CO2 貯留持続し、軽労作で息切れ、疲労感が出現し、NPPV再導入となりました。前回入院時にNPPV導入を試みるも、拒否が強く導入が困難だった経緯があったため、導入にあたり、導入が困難な原因を確認する必要性を感じました。
■対応方法のカンファ
看護師の思いは、「前回NPPV導入拒否が強かったのはどうしてか」「何が原因だったのか、原因がわかれば再導入できる。Aさんに何が原因だったか聞いてみよう」というものでした。
一方、Aさんの思いは、「鎮静剤を使いマスクをつけられた。前はつけられなかった」「今度もつけられそうな気がする」でした。マスクがずれて強い圧がかかる苦痛や、警報アラーム音のストレス、警報ランプをみる不安、機械の操作、手技が大変ではないかという不安、呼吸と合わず強い風がくる不快感があるようでした。
そこで、HCUスタッフで情報を共有し、具体的な対応方法のカンファレンスを行いました。
■妻の協力も得て
カンファレンスで、患者指導、初期導入の対応、精神面での援助の必要性を確認しました。患者指導として、機械の取り扱い方法、警報音が鳴った場合の理由の確認、パンフレットを使用しての説明、指導、NPPVの利点、呼吸方法について説明しました。
NPPV導入時の対応として、マスクの種類の選択、送気の感触確認、呼吸方法の指導、圧調整を行い、短時間の装着から開始しました。精神面での援助として、性格を配慮し、看護師から意識的に声をかけ、何かあればすぐ近くにいるなど、安心感が持てるよう援助し、恐怖心や不安をひとつひとついっしょに確認、対応しました。
しかし、初期導入支援をすすめる中で、新たな問題が発生しました。Aさんは「自分ひとりでできるかどうか。すぐに疲れてしまい、ひとりでは無理」「妻の負担が増え、協力してとは言えない」と言うのです。私たちは、自宅でも継続して装着していくには妻の協力が不可欠であり、妻の思いを確認する必要があると考えました。
確認すると、Aさんの妻は「私にできることがあれば、いろいろ教えてください」と協力的なことがわかりました。Aさんは、妻の協力が得られることがわかり安堵(あんど)した表情をみせ、NPPV装着時間以外でも自ら積極的にNPPNVをつけるようになりました。
■双方の思いを橋渡し
NPPVの導入が困難だった原因を明確にし、不安や疑問点に統一した対応ができたことが、受け入れにつながりました。医師や他職種とも情報を共有し、個別的な導入支援ができました。双方の思いを橋渡しし、家族も含めてチームでAさんをささえ、根気強くかかわることで、Aさんの気持ちの変化を生み、治療意欲の向上、受け入れの促進になりました。
また、HCUという環境が、身体的・精神的変化にいち早く気づき、より充実したサポートの提供を可能にし、治療を継続する上でのささえになりました。
今回の事例を通して、慢性疾患を持つ患者の心情に耳を傾け、理解を示し、病気や機器を受け入れることができるよう、家族の協力や医療チームで連携しながら、継続的な支援をしていくことの重要性を学びました。
(民医連新聞 第1686号 2019年2月18日)