相談室日誌 連載457 高齢独居の女性の事例 公的年金の貧弱さも痛感(東京)
90代のAさんは着物の仕立ての仕事などで生計を立て、自宅を購入し、1人で生活してきました。老後は、介護サービスなどを利用しながら生活していましたが、貧血が進行し入院となりました。もともと高齢独居ということもあり、施設入所の話も出ましたが、本人が自宅での生活を希望したこと、収入が国民年金のみという経済的理由もあり、サービス調整をして自宅に退院する方針となりました。
入院中に、他区に住むキーパーソンの弟に生活について聞いたところ、Aさんは弟に迷惑はかけたくないと、世話をしてもらうことを条件に隣人に自宅を贈与していたことがわかりました。しかし隣人はAさんに会うことすらなくなり、結局80代の弟が、自身の家族の介護をしながら仕事をし、Aさんの身の回りの世話や経済的な支援をしていました。
そこでAさんと弟に、Aさんの生活保護申請をすすめたところ、「年金をもらっているので、自分たちで何とかしないといけないと思っていた」と、誰にも相談できずにいたことがわかりました。その後、生活保護を申請して受給が決定し、Aさんは無事に退院しました。退院後、Aさん宅を訪問したところ、Aさんも弟も穏やかに生活できている様子で、「安心して生活できるようになった」と繰り返していました。
Aさんの事例から、真面目に働いてきても国民年金だけでは生活が立ち行かない現状を聞き、公的年金の貧弱さを感じました。「自分たちで何とかしないといけないと思っていた」との発言からは、自己責任論が広く浸透していることを実感しました。
私自身も、今まで以上に地域へ出て、使える制度やいつでも相談できる窓口を知ってもらう活動を行いたいと思いました。そして、権利としての社会保障を守るため、制度の矛盾や不備を地域や行政へ訴え、1人でも多くの人が安心して生活できるまちづくりをめざしていきたいと思います。
(民医連新聞 第1685号 2019年2月4日)