“子育て目線”で しゃべって学んで 宮城・坂総合病院職員有志 「子育てカンファランス」
女性も男性も、仕事と育児を両立させていきたい。そんな子育てまっただ中の同僚が互いに励まし合える場を、と、宮城・坂総合病院では4年前から有志の集まりを開いています。お邪魔しました。
(丸山聡子記者)
毎月第3水曜日、昼休みになるとお弁当を持った職員が集まってきます。その名も「子育てカンファランス」。子育て中のママ・パパ職員を中心に、誰でも参加OK。子育ての悩みを語り合ったり、専門知識を生かして学び合ったり。2015年6月にスタートし、今年2月には36回目を迎えます。
立ち上げたのは、麻酔科の土村まどか医師。きっかけは、同じ科の近藤紀子医師が産休・育休明けで職場復帰したことでした。「子育てと仕事に追われながら不安や緊張でいっぱい。1対1で相談にのることもできるけど、もったいない。集まってみたら? という話になったんです」と土村さん。自身も子育てをしながら働き続け、その子どもたちは大学生。「これから子育てする同僚たちの力になりたい」と考えています。
■「救われる」場所
「子育てカンファ」では、院内で働く仲間を呼んで学ぶことも。最近では、ペアレントトレーニングや発達障害の子どもとのふれあいのコツなどを取り上げました。
取材に訪れた日は、「子どもと薬の相談会」がテーマ。同院で働く薬剤師の小倉知恵美さんが講師です。小学2年、5年の2人を育てるお母さん。「保育園を卒園したら、お母さん同士のつながりの場がなくなり、寂しくなって参加しています」と言います。ここで顔見知りになった近藤さんから、子どもの薬のことで相談を受け、「それならカンファで薬の話をしよう」と盛り上がりました。
内服薬、吸入薬、塗り薬、目薬、坐薬に分け、注意点や飲ませ方の工夫などを話します。薬剤師としての目線に加え、“お母さん目線”のアドバイスが秀逸! 例えば目薬編では…「眠っている時にさすと、だいたい起きちゃうし、肝心の目薬はさせないし、踏んだり蹴ったり。オススメできない」「お気に入りのテレビ番組を見ている時はまばたきの回数が減るので、さしやすい!」などのアドバイスに、一同「なるほど~」。
我が子がインフルエンザにかかった時には、「タミフルは初回で失敗してしまい、その後は断固拒否。薬剤師として敗北感を味わった」。ドッと笑いが起こります。
2人目が生まれた時から参加しているのは本郷舞依医師。「病院にいる専門家から直接話を聞けるのはぜいたく! 子育ての悩みや愚痴、嬉しかったことを互いに話して、共感、共有してもらえるだけで救われます」と話します。
助産師の中濱摩美さんは、「産科で働いているけれど、日常的に診るのは新生児ばかり。育児期のお母さんたちの相談にのれるように参加した」と言います。
■部署を越えてつながれる
坂総合病院にはかつて、あかつき保育園という院内保育所がありました。土村さんも2人の子どもを預けて働きました。2カ月の産休のみで職場復帰。昼休みには、保育所から「おっぱいの時間です~」と電話がかかってきました。「ほかのお母さんたちと並んで授乳しながら、いっぱい話をしました。病院では『先生』と呼ばれるけど、保育所では『○○ちゃんのお母さん』で子育てする仲間。同じ病院で働く人の中に、仕事のつながりではない仲間がいるのが心強かった」と振り返ります。
あかつき保育園は2011年に認可保育園に移行し、その役目を終えました。「以前のようなつながりがなくなってしまった。子育て中の人が職場で孤立しないように、この場が役に立てたら」と土村さん。
この日、生後11カ月の息子を連れて来たのは、育児休暇中の佐々木由紀子さん(作業療法士)。職場復帰は目前です。職場の復職支援セミナーで「子育てカンファ」のことを聞き、初めて参加しました。「長期の休みで仕事のことをだいぶ忘れているので、違う部署の人とつながれて安心しました。復職後も、何かあったら相談できるかな」と話します。復職後も参加したいと考えています。
「目下の悩みは、看護師が参加しづらいこと」と土村さん。多忙で休憩のタイミングが合わないなどが理由です。「『参加できる時に来て』というスタンスで、ゆるーく続けていきたい」と話していました。
(民医連新聞 第1685号 2019年2月4日)
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