沖縄「辺野古」県民投票 問われているのは日本の民主主義 県民投票の会代表 本山仁士郎 さんに聞く
沖縄県では2月24日、「辺野古米軍基地建設のための埋め立て」について賛否を問う県民投票が行われます。昨年12月14日、政府は沖縄・名護市の辺野古沖に土砂投入を開始しました。県民投票でめざすものは何か。「辺野古」県民投票の会代表の元山仁士郎さんに聞きました。
(丸山聡子記者)
土砂投入が始まり、「おかしくね!?」という空気です。9月の県知事選で与党推薦候補だった佐喜眞さんに投票した人も含めて。一方で、辺野古の海に次々と土砂が投入される様子を目の当たりにし、「もう後戻りできない」という無力感があるのも事実です。
そんな中、基地建設反対を掲げる玉城デニー県知事は現地に足を運び、基地建設断念まであきらめない決意を語りました。その姿に悲壮感はなく、「あきらめない」たたかいが広がっています。
■辺野古基地は必要か
私は、宜野湾市にある普天間基地の近くで育ちました。生まれた時から「世界一危険」な基地がそばにあり、「うるさいな」「怖いな」と感じることもありましたが、深く考えてきませんでした。
大学進学を機に東京に出ると、周りから基地について聞かれることが何度もありました。そのたびに答えられず、基地について何も知らなかったと気づき、とても恥ずかしくなったのです。
県民投票で問うのは、「辺野古米軍基地建設のための埋め立て」に賛成か、反対か。基地建設の権限は国にありますが、埋め立ての権限を持つのは沖縄県知事です。
沖縄県が基地建設承認の取り消しを求めた裁判で福岡高裁判決は、沖縄には「普天間基地の整理・縮小」を願う民意と「辺野古新基地建設反対」の民意があるため、選挙結果からは辺野古基地建設への民意は明らかではない、としました。ならば、「辺野古基地建設のための埋め立て」に絞って、県民投票で問うてみよう。それが、今回の県民投票です。
沖縄県民の多くが、普天間基地の1日も早い閉鎖と返還を願っていることは間違いありません。辺野古に建設されようとしているのは、滑走路を2本備え、格納庫も軍港も備えた米軍基地です。普天間基地と引き替えに、なぜ辺野古に最新鋭の基地を造らなければならないのか。県民投票が問うのは「埋め立ての賛否」ですが、その過程を通じて大いに議論したいと思っています。
■「対話」の力
戦争を体験した人が急激に少なくなっていることに、危機感があります。戦争体験者から直接話を聞ける僕らは、何を受け継ぐのか。県民投票は、戦争と基地を結びつけて考えるラストチャンスです。引き継ぐものを考える機会にしたい。「世代間の対話」です。
もうひとつは「島々との対話」です。沖縄には大小40もの島があります。辺野古のことは沖縄本島の問題、という意識もあります。他の島の人たちに辺野古の問題を考えてもらうだけではなく、その島はどういう問題を抱えていて、どんな願いを持っているのか、耳を傾け、対話をしていきたい。
県民投票を求める請願署名活動の中で、私自身も多くの人と対話をしました。基地で働く知り合いも多く、複雑な思いもあります。今はフェイクニュースも多いし、ネトウヨからの攻撃もあります。だからこそ、実際の対話を通じて見えてくることがあるはずです。
辺野古の基地建設を巡り、将来「何をしていたのか」と問われた時にきちんと答えられるように、県民投票は、未来の子どもや孫たちへの責任だと思っています。
■最後まであきらめない
選挙で「基地建設反対」の候補が勝っても、県知事が訴えても、基地建設は強硬にすすめられる。こんな政府で日本は大丈夫なのか。日本中で議論すべきです。
普天間基地を閉鎖した後、沖縄県内に新たな米軍基地を建設することが必要でしょうか。沖縄の米海兵隊は1万8000人超で、米国外にいる米海兵隊の98%。攻撃部隊である海兵隊がこれほど沖縄に必要でしょうか? 新たな基地が必要だというなら、なぜ沖縄県内に造らねばならないのか。
県民投票の結果を受け日本政府がどう対応するかは、まさに民主主義が問われる問題です。県民投票後もたたかいは続く。憲法がいう「不断の努力」だと思います。
5つの自治体が県民投票を実施しないと表明しています。これは住民の投票権を奪うものです。議会の前でスタンディングをしたり、住民から声があがり、実施に転換した自治体もあります。最後まであきらめず、全自治体での投票実施をめざします。
※全日本民医連は、沖縄民医連の要請を受け、県民投票への支援を決定しました。詳細は、全民医発(43)第ア―306号を参照してください。
(民医連新聞 第1684号 2019年1月21日)