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民医連新聞

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2019 新春対談 倉林明子参院議員×藤末衛会長 主体者として発信し変える側になる 参院選は憲法を壊す政権に 個人の尊厳かかげるたたかい

 今年の会長対談は、倉林明子参議院議員と行いました。2018年を振り返りながら、2019年を語り合いました。

(長野典右、代田夏未記者)

藤末 新年あけましておめでとうございます。
倉林 おめでとうございます。
藤末 新しい年になりましたが、通常国会では、安倍改憲発議、辺野古新基地建設強行、10月からの消費増税などがねらわれています。4月にいっせい地方選挙、夏には参議院選挙も行われます。参議院議員になってからの5年半の政治を振り返ってみて、いかがですか。
倉林 初当選した2013年の12月に特定秘密保護法の強行採決がありました。安倍政権は憲法と民主主義を踏みつけにする政権だと実感しました。2015年の戦争法、2017年の共謀罪と、最後は数の力で無理やり押し通すというやり方でした。民主主義や法治国家の根幹を掘り崩す政権に驚くと同時に、早く辞めさせないと大変なことになる、というのが最大の印象です。

■自衛隊憲法明記の意図

藤末 2018年2月に全日本民医連第43回定期総会を開きました。2年間の運動方針の一番は改憲阻止です。ここまで改憲発議を阻止してきたことは、大きな意義があると思います。「安倍改憲NO! 3000万署名」は力です。国民がさらに憲法を学び、使って、たたかうことが必要になっていますね。
倉林 戦争法で自衛隊を海外に出し、集団的自衛権の行使は容認したといっても、憲法がある限り、海外で戦闘行為はできない。生活保護法を改悪しても、憲法の生存権保障は無視できない。日本国憲法はたたかいのよりどころであり、生きていることを実感します。
藤末 憲法を学べば、憲法が定めた通りの政治ではないことがわかります。「憲法どおりの政治をすべきだ」とたたかうことですね。
倉林 最近、「12条する」と言う青年がいるんですよ。12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」と定めています。国民が自由や権利を守るために不断に努力することを、「12条する」と言うそうです。今、憲法を壊したい安倍政治に対抗する軸は、憲法そのものにあるということですね。
藤末 自衛隊創設の歴史を知れば、9条に自衛隊を書き込む意図がよくわかると思います。自衛隊はつくりたいが9条と矛盾する、そのために歴代の政権は自衛隊の活動を制限してきました。憲法に書けない理由があったからです。その自衛隊を戦争法成立後に憲法に書き込もうとする意図を、明らかにしなければならないと思います。
倉林 自衛隊は災害時に活躍しているので、憲法に追加しても大きな問題はない、と考えるのは危険です。戦争の心配がない状況をつくり、軍隊としての自衛隊の機能を解消していくことが必要です。
 昨年は南北首脳会談や米朝会談で世界は大きく動きました。
藤末 北方領土問題を解決して、平和条約の締結にむけた日露首脳会談も行われましたが、日米安保条約の下、北方領土にアメリカの基地が造られることへの懸念がロシア側にあります。日本政府が自主外交できないことが問題ですね。
倉林 沖縄で新基地建設が強行されていることを見ても、アメリカの意思で日本中どこでも基地が置けるわけです。安保条約の下でアメリカの基地がある限り、日本は標的の国になってしまう。ですから、アメリカの基地を一つずつなくすことが、隣国を攻撃しない国、憲法どおりの国ですよと示す一番わかりやすい対応です。
藤末 民医連でも辺野古新基地建設反対の運動を通じ、日本全体の問題というスタンスが職員の中にも体得できてきました。

■消費税に頼らない社会保障

藤末 2017年の「経済的事由による手遅れ死亡事例調査」では、全国で少なくとも63人が治療の手遅れで亡くなったことがわかりました。現場で起きている問題を告発していく必要があります。
倉林 生存権侵害の実態があることを可視化し、告発していく活動は、民医連ならではですね。このような問題が国会で共有されることが大事です。
藤末 10月から消費税を10%にするというのも見逃せません。5%から8%に増税した時から日本経済は失速したままで賃金は上がらず、年金は下げられています。
倉林 低所得者向けに2万5000円程度の買い物ができる商品券を配ると言いますが、一時のしのぎで意味がありません。軽減税率についても、クレジットカードを持たない消費者や専用機器を導入できない中小業者は排除される。結局弱い人が被害を受ける仕組みです。
藤末 消費税は、医療機関にとって2つの問題があります。患者負担が増えることと、消費税が医療機関の負担でしかないことです。
倉林 医療は、消費税分を診療報酬で補てんするのではなくゼロ税率にしなければ患者負担になってしまいます。社会保障の財源は消費税に頼らず、大企業や富裕層に、能力に応じて負担を求める。このことは多くの市民と一致し、広がっていく可能性があると思っています。
藤末 社会保障の財源問題を含め、市民と野党の共闘が広がっていくためにも、現場から実態を発信することが大事ですね。
倉林 2018年度の診療報酬・介護報酬改定のときから、野党合同ヒアリングが始まりました。日本医師会からも意見を聞くなどしています。財源は消費税しかないと考える野党議員も少なくありませんが、いま増税していいのか、という点では野党で一致できる可能性がある。統一地方選挙、参議院選挙で争点にしていきたいと思います。
藤末 消費税が上がると、経済的に苦しい人たちはもう医療機関に受診できなくなります。外来患者も減ってしまいます。
 日本福祉大学前学長の二木立(りゅう)先生は、「このまま社会保障を削減していけば、国民皆保険が全く空洞化し、日本国民が最後の絆を失い、国民統合が危うくなる」と警告しています(『医事新報』2018年5月)。
倉林 「全世代型の社会保障」「1億総活躍」と言いますが、それがめざすのは世代の分断と、年金はもらわず死ぬまで働け、ということ。安心して生活できる医療・年金制度をつくる必要があります。

■市民と野党の共闘で

藤末 夏にはいよいよ参議院選挙がありますね。
倉林 まずは安倍政権を退陣させるために、野党候補が参議院選挙で勝つことです。憲法と民主主義を壊す政権に対して、個人の尊厳をかかげるたたかいになると思っています。やはり市民と野党の共闘が広がっていくことが大切です。
藤末 地方議会や国会に民医連出身の議員がいることは心強いですね。民医連職員が政治を意識するためにも、同僚や先輩たちが政治の世界に入り、民医連綱領がめざす社会の実現へがんばっていることは、とても励みになります。
倉林 京都府議の時、京都で未熟児の赤ちゃんが助からないと聞いたんです。調べると、京都府は乳児の死亡率、周産期死亡率、ワースト2位でした。NICUがなく、これは政治の問題だと府議会で取り上げました。その結果、NICUが広がり、助けられなかった命が助けられるようになりました。
藤末 疫学的なデータで、社会格差があると健康格差につながっていることがわかっています。健康を阻害するような社会的な問題を、どうやって減らすのか。診察室だけでは無理な話で、政治家との協力、共同はどうしても必要です。
倉林 いま現場は本当に忙しく、疲弊していると思います。その中でも、人権を保障し、質を高めながら、よい医療、看護、介護の実践を積み上げ、希望につながる現場の実践を発信していくことを、民医連の仲間たちに期待しています。
藤末 次代を担う若い職員にメッセージをお願いします。
倉林 医療制度が変わると、これまでできたことができなくなり、仕事もしにくくなります。しかし、制度は変えられます。変えたいと思った人が発信して、初めて変わるし、変えられます。主体者として、変える側になることができると考えて行動してほしい。
 いっしょにがんばりましょう。

(民医連新聞 第1683号 2019年1月7日)