全職種でとりくむ医学対で初期研修医200人、奨学生500人の実現を 200-500ロードマップ達成のための全国医学対決起集会
一〇月二〇~二一日、東京都内で「200-500ロードマップ達成のための全国医学対決起集会」を開催しました。全国から一八〇人の医師、医学対、事務幹部が参加。二〇〇人の初期研修医の受け入れ、五〇〇人の奨学生集団の目標達成をめざし、講演やシンポジウム、討論を行いました。
(代田夏未記者)
全日本民医連医学生委員長の後藤慶太郎医師が開会あいさつと問題提起を行いました。二〇一九年度は初期研修医の受け入れ定員数と研修希望のマッチングが過去最高の一七七人となりました。奨学生総数も、二〇一五年の大運動や一六年、一七年のMovementにより四七四人と着実に目標の五〇〇人へ近づいています。「来年は五〇〇人を上回るよう、あと半年で一・一倍がんばろう!」と提起。「あと一人つながり、あと一人増やす、あと一つ語り生き方に迫っていこう」とまとめました。
次に、山田秀樹副会長が「新専門医制度時代に取り組む医学対活動」と題し学習講演を行いました。「新卒医師の入職数は右肩上がりですが、問題はその中身」と指摘。医師を受け入れて育てても、専門医制度により後期研修の継続率が低下している現状から「理念に共感した奨学生集団を育て、迎え入れることが求められている」と話しました。
専門医制度の背景には「機能分化」「地域包括ケア」「地域完結型」の医療・介護をささえるため、国が政策的に総合診療医への誘導を図ろうとする意図があります。また、医師の偏在対策も都道府県の責任へと権限を強化し、地方丸投げの流れとなっています。
一方で、医学生は専門資格を取りキャリア形成を積み上げていきたいと考えています。「その過程で欠落しがちな医師のあり方や社会的役割を、民医連としてどうとらえて研修に落とし込むのかが重要です。後期研修は専門医を取る手段ではありません。時代に求められるキャリア形成とは何か、学生に意識してもらうことが大切で、それを語れる医学対が重要です」と強調しました。
「『医療・介護活動の2つの柱』を実践する医師」「民医連運動を担う医師」の養成で必要なものは、(1)地域の中で育つ、(2)多職種の中で育つ、(3)役割を担って成長する、(4)SDHを意識する空気の中で育つ、です。「医療は健康をささえる一つでしかない。無差別・平等の地域包括ケアの実践のために、社会や生活支援の視点を持ち、社会に働きかける医師を育てましょう」と呼びかけました。
講演後は、班討論を行いました。講演の感想と奨学生確保と育成について、各県の活動と今後のとりくみを共有しました。
■「医療の誇り」伝えて
一日目の最後には、奨学生からメッセージをもらいました。奨学生活動に対しての思いや、医学対担当者への思いなどを発表。医学対の担当者が医療・介護に携わることの魅力や意義をいっしょに考えてくれたことが印象深かったと語りました。医学対に対する要望として「医師としての使命感があるので、医療の誇りを伝えていってほしい。民医連での経験や人生を伝えてくれることで、もっと民医連を考えることにつながる」と伝えました。また「個人の成長のために医学生が主体となって学びたい」と切望し、医学対への感謝と希望を語りました。
二日目は活動報告、シンポジウムを行いました(別項)。始めに全日本民医連医師部の小田芳人さんが「二〇一八年医学対 現状調査まとめ」を報告しました。
その後、学習講演とシンポジウムを受けて、200-500ロードマップをやりきるために、奨学生の確保と育成で強化する点を地協ごとに討論。討論でまとめたスローガン到達目標ののぼりをつくり、地協ごとに報告しました。
閉会の言葉は、全日本民医連副会長の山本一視医師が「奨学生がここ数年で大きく飛躍している。残り半年も奮闘していこう」と締めました。
活動報告~シンポジウム
■福島 国井綾さん(医師)
県連医学生委員長の国井綾医師は福島のとりくみを報告。二〇一三年以降の一〇年の目標は「研修医定数である三人の奨学生を毎年迎え入れ、青年医師集団と奨学生集団をつくり、県連医師集団の世代交代をはかり、被ばく地フクシマで民医連運動を継続する」です。高校生や予備校生対策として、進学校や予備校への訪問や、県内各地で説明会を行っています。奨学生には、多職種からなる院内医学生委員会を強みとして、全職種で研修や実習をささえる姿勢でいきたいと報告しました。
■愛知 吉岡モモさん(医師)
愛知民医連医学生委員の吉岡モモ医師は自分の学生時代の経験を振り返りながら報告。浪人生の時に担当者から送られてきたはがきが縁で現在の法人で働くことになりました。今は「地協や全日本ででた方針を伝え、また法人や県連の声を届けることが私の役目」と話しました。「医学生運動を軸に連携できる地協をつくっていきたい。医師や事務だけでなく全職種で行う『チーム☆医学対』をめざし、法人・県連全体でどうとりくむかが課題」と話しました。
■山梨 長田潤一さん(事務)
山梨民医連医学生担当者の長田潤一さんは「三年間の活動を振り返って」と題して、特徴的な四つの活動をとりあげました。(1)高校生対策を発展させるため、事務幹部とともに家庭訪問。(2)医学生のSDHを学びたいという声をとらえ、さまざまな角度からSDHを学び、将来の医師像を深める。(3)担当集団の深化を図るため、個別のかかわりの学生でも集団で議論し、各対策について半年に一回総括を行う。(4)各職場へアンケートやニュースの発行を行い、全職員で医学対活動にとりくむ、です。奨学生とともに育ち、意思統一して達成したいと報告しました。
■熊本 木原望さん(事務)
熊本民医連事務局長の木原望さんは「医学対担当者の育成と集団化のために」と題して報告。現場が多少大変になっても医学対の課題を重視し、医学対担当者の配置にこだわり続けている歴史があります。また民主的集団を重視し、県連として学習を重視しながら個人の成長を促していると報告。「相手に敬意を示すことで信頼関係をつくり、ともに学び、運動する。その中で、楽しさも追求することが大切」と話しました。
〈シンポジウム〉
目標をやりきるために
国井 普段から相談ができるように体制の強化。問い合わせに対してのレスポンスが早い対応をしている。
吉岡 どれだけ充実させた実習が行えるか。注目されているJ―HPHの民医連の活動を広めること。
長田 早期のかかわりを継続的に行う。全職員を巻き込んでとりくむことでチーム医療にもつなげる。
木原 熊本には水俣病や被災者支援など日常的なフィールドの場があるため、それを活かすこと。そして全日本民医連から提起されたことはしっかり議論してできることを地道にとりくんでいく。
担当者・幹部の人に望むこと
国井 医局以外とも学生のうちから交流できるとよい。共同組織も巻き込みたい。
吉岡 いっしょに学生を育てて、学生が学んで変わっていくことは楽しいことだと知ってほしい。
長田 担当者は、守られている・関心を持っていると思われるとがんばれる。また、医学生委員の医師とのかかわりも大切。
木原 医学生委員、医局、担当者とともに学び「チーム医学対」を考えていきたい。
(民医連新聞 第1681号 2018年12月3日)