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民医連新聞

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診察室から 眼科での無低診

 眼科医として約四〇年勤務してきました。診断機器や治療分野のめざましい進歩の中、治療の選択肢も増えましたが、非常に高額なものもあり、経済的な点から、受診遅れや中断者の増加を実感しています。視力や視野などの視機能は、生涯のQOL、職業や経済的安定に直結し、抑うつなど精神面にも関連します。「どうしてこんなになるまで」ということが、手遅れ死亡事例と同様に、眼科領域にもあります。命にかかわることでなくても、糖尿病網膜症では治療時期の遅れにより、生活基盤がくずれ、白内障では進行しすぎが、手術時に難症例となります。
 当院では二〇一一年から無料低額診療事業を開始。初年度一二人からはじまり、毎年、新規+更新利用者の中には、目のさまざまな症状での眼科受診もあります。糖尿病網膜症が一番多く、その他に白内障、結膜炎などですが、印象深い三例を紹介します。うち二人は他科での受診歴がなく、無低診での白内障手術を希望し初診。眼科から無低診利用となりました。手術費用に悩み、友人から当院のとりくみを聞いたそうです。
 Aさんはこわもてで寡黙な人でしたが、手術後は笑顔がみられ、ほっとしました。後にがんで亡くなり、独居での諸手続きなどから壮絶な人生が垣間見えました。献体の遺志があったことも知りました。Bさんはすでに他医で甲状腺がんの治療中でしたが、見えにくさが解消し、不安が和らぎ、治療に専念する元気がでたようでした。また、中断を繰り返していた糖尿病のCさんは、白内障や網膜出血が進行し、視力障害から通院や生活不規則となり、大血管合併症も心配されました。白内障手術とレーザー治療を機に利用し、生活再建へ踏み出しました。
 無低診利用では、自院での完了が求められるため、的確な診断や手術適応判断、合併症を起こさない着実な技術を、とプレッシャーと限界も感じます。しかし、まだまだこの制度の情報が、本当に必要としている人に届いていない、周知の方法は? と悩みもあります。
 (西内貴子、徳島健生病院)

(民医連新聞 第1681号 2018年12月3日)