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民医連新聞

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3000万人署名を土台に野党共闘で憲法が生きる日本へ 一橋大学名誉教授 渡辺治さん

 全日本民医連は一〇月二三日、東京都内で第三回憲法九条を守る憲法闘争全県連代表者会議を開きました。学習講演は、一橋大学名誉教授の渡辺治さんが「安倍政権のめざす日本から憲法の生きる日本へ」と題し行いました。要旨を紹介します。
 (代田夏未記者)

 安倍改憲は臨時国会を前に新たな局面に入りました。総裁三選後、安倍首相は側近を送り込んで改憲推進の体制を刷新し、繰り返し臨時国会での改憲案提示を表明しているからです。
 二〇一七年五月三日に改憲提言した際の思惑では、二〇一八年の通常国会で発議し秋には国民投票・改憲実行のつもりでしたが、この甘い思惑は国民の運動でもろくもはずれてしまいました。モリカケ問題で政権支持率が激減し、今年の通常国会では発議どころか憲法審査会に改憲案の提示すらできなかったのです。
 しかし、安倍政権は改憲をあきらめていません。新体制や強硬発言は、あらためて安倍首相の改憲への意欲を見せたものです。

■9条の力

 なぜここまで改憲に固執するのでしょうか。識者の中でも、戦争法が通ったことで「九条は死んだ」という人がいます。そんなことはありません。九条は依然軍事化の最強の歯止めとなっています。だからこそ安倍政権は九条改憲に執念を燃やしているのです。
 五〇年代の改憲策動は、安保闘争という国民的運動で挫折させられました。政府は改憲を封印し、自衛隊は九条二項が禁止する「戦力」=軍隊ではなく「自衛のための必要最小限度の実力組織」だと強弁。しかし「自衛隊は軍隊ではない」とするため、活動には強い縛りがかけられ、自衛隊は海外での武力行使が制限されています。九条がある限り安倍政権のねらうアメリカ追随の軍事大国はできないのです。

■自衛隊明記の危険性

 安倍首相は「九条改憲は国民の九割が支持する自衛隊を憲法に明記するだけで何も変わらない」と強調。世論調査でも安倍改憲には反対派が多数ですが、九条に自衛隊を明記することには意見が分かれています。
 自衛隊を国民の九割が支持する理由は、自衛隊が災害派遣に率先してとりくみ、海外に行っても人を殺さないからです。なぜ自衛隊は災害派遣に尽力し海外で人を殺さないのでしょうか? それは、自衛隊は九条二項の禁止する軍隊であってはならない、という縛りがあるからです。
 自衛隊を憲法に明記すれば、戦争法で海外での武力行使が可能になった自衛隊は合憲となります。米軍の軍事行動への加担が一気にすすみ、九条二項は死文化。災害派遣に精を出す自衛隊は変質します。
 それだけでなく、日本社会全体が変わります。日本の憲法は戦争も軍隊の存在も前提としない憲法です。そのため非常事態規定も、軍事秘密保護法もありません。徴兵も憲法で禁止されています。多様な思想や活動が認められているのも戦争がないためです。九条で人権も守られているのです。憲法に自衛隊が明記されれば、こうした憲法は変質します。

■改憲阻止のために

 一〇月二四日からの臨時国会で、安倍首相は何とか衆参両院の憲法審査会に自民党案を提示し、通常国会で公明党、日本維新の会を巻き込んで改憲原案を作成・提出し、発議を強行することをねらっています。
 改憲阻止のためには(1)臨時国会で改憲議論をさせない、(2)通常国会では改憲原案の提出・発議を絶対許さない、(3)参院選で安倍改憲最後の砦、三分の二を阻止する、ことが必要です。発議を許さず参院選で野党の勝利を勝ち取れば安倍改憲を打破することができます。これらをやり切るためには、国会・選挙での野党共闘と三〇〇〇万人署名の力がカギとなります。
 あらためて体制・目標を立て直し、三〇〇〇万人達成するまで住民の過半数をめざしがんばる決意を固めましょう。駅頭署名とともに、地域の全戸に入り署名運動を強めましょう。安倍政権を打破し改憲を断念させるには、この一年が勝負。本当の決着をつけましょう。

(民医連新聞 第1680号 2018年11月19日)