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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 自然治癒力を高めるケア 東京・健和会臨床看護学研究所 心身を調える技熱布バックケア

 東京・健和会臨床看護学研究所では、熱布清拭技術を基盤に熱布バックケアを考案し、臨床への普及活動を始めました。第一四回看護介護活動研究交流集会での中山久美子さんと、東郷美香子さんの報告です。

 一九七〇年代、川嶋みどりさんらが主催する東京看護学セミナーで、温熱刺激を期待した熱布を用いたバックケアの方法を国分アイさんが紹介しました。川嶋さんは、そのケアを「熱布清拭」と名づけ、「看護技術の安楽性」(メヂカルフレンド社、一九七四年)、「実践的看護マニュアル【共通技術編】」(看護の科学社、一九八三年)などへの掲載や教育活動で普及し、入浴に近づけた清拭として臨床に広がりました。
 しかし近年では、多忙な業務や医療安全を理由に、綿タオルが不織布ディスポタオルに替わり、熱湯使用の制限、清拭車の廃止等により熱布清拭の実施が減りました。温熱刺激は、心身の変調を調え、自然治癒力を高めるケアとして有効です。

■説明会で体験

 臨床での普及にあたり、(1)温熱刺激による効果、適用する対象、禁忌・留意点をまとめ、熱布タオルの準備~背部へのタオルのあて方~タオル除去後の湿気取り・マッサージまでの手順書を作成しました。(2)二〇一七年一一~一二月、A法人三病院で、看護師長・主任を中心に説明会を行い、熱布バックケアを体験してもらいました。(3)各病棟での伝達講習のもと、熱布バックケアを実施した看護師に、実施状況や患者の反応などを所定の用紙に記録してもらいました。結果は以下の通りです。
 熱布バックケア実施の目的(複数回答)は、「気持ちよさをもたらしたい」二七例、「清潔を保ちたい」二一例、「苦痛を緩和したい」一六例などであり、「入眠を促したい」と夜勤帯での実施も四例ありました。ケアは二〇分以内で実施できており、実施後の患者の反応(複数回答)では、「気持ちいい」三一例、「温かい」二七例、「感謝する」一九例、「笑顔になる」一七例、「リラックス」一四例、「眠くなる」一〇例の他、「お風呂に入ったみたい」「幸せ」との発言や、「不穏が落ち着いた」「ナースコールがなく入眠した」などがありました。実施上の課題(自由記述)では、「三分位で冷めた」「首元から冷えた」「寝衣・寝具を濡らした」「体位の調整が難しい」など手技に関する記述や、「上着を脱がせるのが大変」「時間に余裕がないとできない」との意見がありました。

■応用力の育成

 熱布バックケア説明会では、看護師自身が温熱刺激の効果や気持ちよさを体験し、臨床での実践につながりました。患者からは、快の反応、睡眠の導入や不穏が落ち着く、感謝の気持ちや笑顔になるといった関係性の深まりなどの成果も得られています。
 しかし、このケアの日常的な実施は難しいのが現状です。熱布バックケアの普及には、患者の状況に応じた体位の調整や効率的な実施など応用力を育成し、手技を習熟した実施者を増やすとりくみの継続が必要です。
 今年度、A法人では熱布バックケアを実践・普及するという看護部方針に基づき、中堅看護師を対象に研修を二回実施。研修後には「思っていたよりも簡便」「ケアを通してコミュニケーションがとれた」「温かいものに触れ、看護師自身も気持ちよさを感じた」と実施の輪が広がっています。
 今後も、日常生活行動援助が自然治癒力を高める技術であると、看護師自身が効果を実感できるようなとりくみを継続していきたいと思います。
 熱布バックケアをいっしょに広げていきませんか。臨床看護学研究所にご一報下さい。
(電話03-5813-7395 kenwa-rinkanken@nifty.com

(民医連新聞 第1680号 2018年11月19日)