第14回 看護介護活動研究交流集会in宮城 全大会 指定報告 患者、利用者の立場で 民医連のめざす医療・介護の実践
一日目の全体会では、三つの指定演題が報告されました。概要を紹介します。(長野典右記者)
「視覚障がい者の真の自立とは」
池原あゆみさん(沖縄・那覇市地域包括支援センター古波蔵、介護支援専門員)
沖縄・那覇市では、六五歳に達すると介護保険優先の原則により、介護保険の認定を受けなければなりません。視覚障害者六五歳の男性は障害者一級。「自治体に一石を投じるアクションを起こしたい」との相談を受けました。障害福祉サービス制度の介護保険制度への移行は、両制度がめざす「社会参加の機会確保」を困難にさせ、自立支援を阻害する要因となるのではないかと考えました。
介護保険認定調査では要支援と認定されました。視力障害者の自立にむけ、地方自治体の合理的配慮を行う義務に基づき、包括支援グループの那覇市と調整、協議を行ってきました。
その結果、本人の外出にかかる障害者福祉サービス支援内容を拡充して継続、夫の障害福祉サービスを申請し、家事援助を増量、子の障害福祉サービスが拡大するなど、サービスが利用できるようになりました。私たち専門職は、障害の有無にかかわらず、利用者を生活者と捉え、自己実現にかかる支援をしていきたいと思います。
「受診に結びつかず救うことができなかった患者事例を振り返り、見えてきた病棟看護師の役割」
宮脇さおりさん(東京・大田病院、看護師)
八〇代女性患者には認知症があり、息子が介護。四カ月前から下肢に浮腫が出現し、意識不明で緊急搬送。ごみが散乱し、埋もれるように横たわっていました。入院治療後胃ろうを造設し、転院する方針となったものの一八日目で死亡。
一〇年前に自営業が倒産し、夫、長男は他界、次男と二人暮らし。長男の入院費や自宅の改築費のため借金があり、収入は次男の運転手として働く日当のみ。次男は深夜勤務のため、母親にコンビニ弁当を買って食べさせるのが精一杯。親族や近隣の人との交流もなく、社会的な孤立がありました。しかし、看護師やソーシャルワーカーの働きかけで、治療やケアに積極的に参加・協力するようになりました。
「民医連のめざす看護とその基本となるもの」に基づき、受診困難な事例の病棟からの発信、地域で埋もれている可能性のある人へのアプローチ、無料低額診療事業の周知、誰もが患者になれるまちづくり、地域全体のヘルスリテラシーを高める活動に積極的にとりくみたいと思います。
「多職種カンファレンス塾を実施して」
寺前八重さん(京都民医連中央病院、看護師)
京都民医連第五次長計の「医師をはじめとする職員の育成と確保」では、チーム医療の推進を重視してきました。職種を超えて倫理、SDH、意思決定支援の視点を取り入れ、各専門性を認識しチーム医療を担うことなどを目的に多職種カンファレンス塾を研修に位置づけました。初期研修医や老人看護専門看護師をファシリテーターに、研修医、薬剤師、看護師、事務、リハ職員の三~四年目職員を中心に、一回目は二六人、二回目は三五人が参加しました。
第一回目は「認知症高齢者の身体合併症を多職種協働で支える」、「認知症高齢者が『食べられなくなった』時の家族の意思決定支援」、第二回目は、「社会的困難を抱えた患者を支える医療・ケア」について。KJ法を用い、患者のヒストリーが見えてきました。多職種での検討は、患者の状況が多角的に深められ、より的確な治療・ケアの選択ができること、各職種の専門性をお互いに理解することや自分自身の専門職としての役割が自覚できました。
(民医連新聞 第1679号 2018年11月5日)