東葛看護専門学校自治会 給付型奨学金の実現を 実態調査を行い市に陳情
千葉県流山市にある東葛看護専門学校。二〇一五年学校評価懇話会で、講師たちから「授業中に居眠りや欠席をする学生が目立つ」と指摘されました。学びに専念できないのはなぜか? 経済的事情からアルバイトをしなければならない学生が多数いるのではないか? そう考えた学生自治会はアルバイト実態調査を行い、結果を受け流山市に給付型奨学金制度制定の陳情をしました。学生たちのとりくみを取材しました。(代田夏未記者)
東葛看護専門学校の学校評価懇話会を受けて、同校の自治会は、学びに専念できないほどアルバイトで多忙な学生が少なくないと考えました。そこで、学生の経済・アルバイト状況を把握するためアルバイト実態調査を行いました。
■普段の会話がヒントに
自治会の三年生が先頭をきって調査を開始。学生全体に奨学金やアルバイトに関するアンケートを行いました。
しかし、アンケートではわからないこともあり、アルバイトでどんなことに困っているのか、経済面で困っていないか、と聞きにくい問題もありました。「聞きにくいことは仲のいい友だちとの会話の中で、ポロッとでてくる話を参考にした」と三年生のトシノリさん。友だちとの普段の会話から、アルバイトで困ったことや学生の経済状況をつかんでいきました。
■82%がバイト経験あり
アンケートの結果、八五%の学生が奨学金を利用。二種類以上を利用している学生が三〇%でした。使いみちは、三三%が学費、四三%が生活費・交通費に。遊びは八%の結果でした。
アルバイトは、五二%がしており、経験のある学生は八二%。使いみちは、一〇%が学費、三六%が生活費・交通費、三三%が遊びに当てていました(図1)。平日一回の労働時間は四時間未満が四四%、四~六時間未満が二〇%、六~八時間未満が二三%、八時間以上は一三%でした(図2)。
また、四割の学生が、アルバイトによって学校生活に影響があると感じ、アルバイトの負担から学校に行きたくないと思った学生は二割いました。実習時にも二割の学生がバイトをしていました。
■貧困は社会の問題
前会長のフィスさんは「アンケートだけで何ができるのかと思っていたけれど、日本の貧困の状態を地域フィールドで目の当たりにして、何か行動しないと、と思った」と思いが変化しました。
同校では二年次「地域フィールド」で社会の現状と医療との関係を学びます。そこで、日本の貧困や労働問題が見えてきました。「社会的弱者が安心して暮らせない世の中。学生のアルバイトの大変さをもっと身近に感じた」と三年生のカイトさん。実際にアルバイトをしているマリナさんは「貧困は親のせいだと思っていたけれど、社会問題なんだと思えた」と話しました。
■私たちが社会を変える
アンケート結果や地域フィールドから、厳しい経済環境で生活している人の多さを知り、誰もが貧困に陥る世の中で、他人事ではないと感じました。もし学校を辞めざるをえなくなったら、今の奨学金制度では厳しいと感じ、もっと平等に誰もが学べる社会になってほしいと議論。流山市へ給付型奨学金制度制定の陳情を行いました。
対応した流山市の健康増進課課長は「今後検討する」と約束しました。
三年生のカナミさんは「困難な状況でも声を出せない人が多いので、自分たちから発信していきたい」と思いを話しました。陳情から参加した二年生のユウジさんは、「働いてゆとりができたときも、自分たちができる活動を主体的に行いたい」と思うようになりました。
一年生の自治会役員はこの活動には参加していません。先輩たちの活動を聞いて「学校だけでなく、外部の人にも活動していてすごいと思った」「先輩たちの活動を受け継いでいきたい」と話しました。
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当初は、アンケートを行うだけで何か変わるのかと思っていた学生たち。地域フィールドで今の社会や労働について学び、貧困の問題を目の当たりにしました。地域フィールドを通じ、友だちとの会話の中で経済的困難に「気づける力」が養えたと感じました。また、市へ陳情を行うことで、身近な問題を社会背景と結びつけ、よりよい社会を築くために行動することの大切さをあらためて感じるとりくみとなりました。
(民医連新聞 第1678号 2018年10月15日)