被災地に心寄せた支援の継続を 北海道民医連が医療・介護を守る奮闘 北海道 胆振(いぶり)東部地震で震度7、全道停電
九月六日、午前三時七分に発生した北海道胆振東部地震は震度七を記録し、震源地である胆振管内厚真(あつま)町を中心に甚大な被害をもたらしました。北海道民医連事務局長の太田美季さんの報告です。
今回の地震で、道内で死者は厚真町を中心に四一人、負傷者は六八九人、現在も六五六人が避難しています(九月二五日現在)。地震によって道内最大の発電所である苫東厚真火力発電所の運転が停止し、全道が停電するというかつてない震災となりました。停電によって公共交通機関が止まり信号機も停止したため、通勤や車での移動が困難となり、食料品や医薬品、ガソリンなどの物流もストップ。道民の生活と医療、介護の継続に重大な影響をおよぼしました。
■共同組織のささえ
北海道民医連は発災直後から仮設対策本部を立ち上げ、各法人の被害状況の聞き取り調査を始めました。勤医協中央病院は、地震発生後直ちに災害モードで救急受け入れを開始。六日だけでトリアージ受付は一四八件、臨時入院二七人、臨時手術も一件ありました。
じん肺患者が多い芦別平和診療所では、停電が生命の危機に直結する在宅酸素療法の患者宅を午前四時過ぎから訪問。病院や診療所、介護事業所などでは、多くの職員が困難を乗り越えて出勤し、停電がつづく中、患者、利用者の安全を守るために奮闘しました。
食料確保が困難な中、共同組織のささえや職員同士の励まし合いがありました。各病院では、友の会による手づくりカレーやおにぎりの炊き出しが行われました。札幌西区病院のリハビリ科では、「夜勤の看護師さんたちは食事を持って来られないのでは」と心配し、みんなで相談して手づくりのおにぎりを提供しました。
■避難所や地域訪問
発災初日から避難所訪問も行い小学校の体育館や集会所などを訪ねました。持参したわずかな食料と乾パンだけで、毛布で体育館の床に寝るような環境の中、「余震が怖くて家で眠れない」「地震で家具が転倒して片付けが終わらない」など不安を訴えていました。
また液状化が深刻な清田区の友の会員訪問や厚真町、安平(あびら)町、むかわ町の震源地周辺地域での訪問活動も行い、健康と生活状況の把握、困りごとなどの聞き取り調査を開始しました。
電気や水道は復旧し始めていますが、土砂崩れなどで住まいを失った人も多く、避難生活の長期化が懸念されます。冬の訪れの早い北海道では、これからの季節に安心して生活できる住まいの確保や、生活再建のための十分な補償を求めていくことも重要な活動になります。また、停電によって酪農業などの生業(なりわい)で大きな被害を受けた人も少なくありません。
■停電は人災
今回の停電は泊原発再稼働を前提としたシステムに起因する明らかな人災であり、北電と北海道の責任の追及も重要な活動です。
公的病院などから派遣された災害医療チームはすでに撤収を開始しており、避難が長期化するこれからがまさに民医連の出番です。被災地に心を寄せたとりくみを継続していきたいと考えています。
(民医連新聞 第1677号 2018年10月1日)