「総がかり」で守ろう いのち くらし カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表 桜田 照雄さん 依存症患者を生み出すカジノ 「アカンもんはアカン」
いのちと暮らしの危機に、多くの人と総がかりで立ち向かおう―。政府は七月、どの世論調査でも六割以上が反対したカジノ実施法を、西日本豪雨災害の対応より優先し強硬に成立させました。カジノ問題を考える大阪ネットワーク代表で、阪南大学教授の桜田照雄さんに聞きました。(丸山いぶき記者)
カジノ問題は、推進派が駆使する詭弁(きべん)やごまかしに反論できるかがポイント。依存症患者が増える危険性や「アカンもんはアカン」という感性を共有できる人との連帯も不可欠です。
■パチンコとカジノ
パチンコは、景品獲得を目的に一球四円の玉が貸し出される「遊戯」として風営法で規制されています。玉は一分間に一〇〇発までで、一分=四〇〇円、大阪だと一日=一三時間で三一万二〇〇〇円しか負けることはできません。
一方、一勝負一分もかからないカジノの最低賭け金はマカオで約五〇〇〇円。一時間負け続ければ少なくとも三〇万円が消えます。パチンコの一日が、カジノでは最低賭け金で一時間に相当し、賭け金が増えれば時間はさらに短縮します。
カジノのハウスエッジ(事業者の取り分)は三%で低いと言われますが、賭け金次第で事業者の収益は莫大な額に膨らみます。
■依存症で地域振興?!
カジノ運営会社「ラスベガス・サンズ」が米証券取引委員会に提出した財務諸表で収支を試算しました。同社がマカオで運営する世界最大規模のカジノの二〇一七年収益(粗利)は約二九〇〇億円。客が費やした賭け金はその一四倍、総額四兆円超でした。
日本で同規模のカジノが運営されれば、粗利の三〇%、年間八五〇億円超がカジノ税として徴収されます。地方自治体には二分の一(四二五億円超)が還元され、賭け金の一%が地元に落ちることになります。
四兆円の賭博とは、年間一〇〇万円を投じるギャンブラーが、四〇〇万人必要な規模。「依存症の罹患率は一~三%」という推進派の主張によれば、四~一二万人が毎年新たにギャンブル依存症患者になります。
つまり、地元に落ちる賭け金の一%は依存症患者のお金! 「カジノで地域振興」ではなく、「依存症で地域振興」が現実です。カジノ税は客の賭け金が増えれば増えるもの。「射幸心の抑制」とは矛盾します。
■連帯を阻害するもの
経済成長は資本と労働の投入量(絶対数)と効率性(生産性)によると考えられます。少子高齢化で労働力人口の減少が避けられない中、生産性を上げようと人工知能(AI)やビッグデータの活用、遠隔医療などがすすめられています。他方、訪日外国人観光客の購買力に期待し、絶対数の増加を図ろうと飛びついたのがカジノです。推進派は、経済のパイが増えない限り日本はどうしようもないと考えますが、「自分が儲からない」が本音でしょう。
経済成長がなくても、お金に換えられないものを暮らしやコミュニティーの中でつくることが、幸せにつながるのではないでしょうか。医療・介護はそんな暮らしの中心課題です。
カジノに興じる人は何か価値を見出して行うのだから、その選択の自由を国が奪うべきではない、と推進派は言います。しかし個人の楽しみとしての「賭け」とそれを通じた金儲けは全く違います。カジノは客同士に賭博をさせ、勝った者からも手数料をとることで事業者が必ず勝つ仕組み。にもかかわらず客は負ければ自己責任と言われます。
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依存症患者の問題は医療関係者がカジノを考える入口ですが、連帯やコミュニティーづくりを重視する民医連運動にとっても重要な課題だと思います。「自己責任論」で依存症患者を孤独に追いやり、連帯を阻害するカジノに、ともに反対の声をあげましょう。
(民医連新聞 第1676号 2018年9月17日)