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民医連新聞

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骨太方針2018の危険な中身 大企業は減税、国民は負担増 さらに切り捨てる医療・介護

 安倍政権は六月、「骨太方針2018」を閣議決定しました。「骨太方針2015」にもとづき、二〇一六~一八年の「集中改革期間」では社会保障の給付減と負担増が相次ぎました。今回はこれを継承し、一九年からの三年間を「基盤強化期間」と位置づけてさらなる社会保障の解体をすすめるねらいです。(丸山聡子記者)

 「骨太方針2018」が掲げるのは、全ての団塊の世代が七五歳になる二二年までに財政健全化を達成し、プライマリーバランス(行政の財政収支)を黒字化すること。そのために、二〇一九年一〇月に消費税率を一〇%に引き上げるとしています。
 財政健全化への道筋を確かなものにするために、一九~二一年を「基盤強化期間」としました。
 すでに安倍政権は一六~一八年の「改革集中期間」に、社会保障の自然増分を四四〇〇億円も削ってきました。これを継承します。

■地域別の診療報酬?!

 今回の骨太方針では検討課題とされたものも多く、「先送り」との報道もあります。しかし、安倍政権の特徴は、一度検討課題に挙げたものは必ず実行する点であり、注意が必要です。
 具体的な改革メニューは、骨太方針に先駆けて五月に出された財政制度審議会の「建議」を見るとよくわかります(右に抜粋)。
 医療について骨太方針は、七五歳以上の高齢者の医療費窓口負担の「見直し」を明記。財政審の「建議」は具体的に「二割負担」と提起しています。かかりつけ医以外を受診した場合、通常の窓口負担に追加して「受診時定額負担」を徴収すること、薬剤費の自己負担引き上げも明記しました。
 介護分野では、ケアプランの有料化(一回一四〇〇円程度)、老人保健施設や介護療養病床の多床室の室料有料化、要介護1・2の人を総合事業へ移行すること、などを挙げています。
 医療・介護ともに、自己負担を「三割」とする現役並み所得の高齢者の基準を見直し拡大することや、マイナンバーの活用で所得以外の預貯金や不動産などの資産を把握し、負担増につなげる仕組みづくりも検討するとしています。
 医療機関に影響する内容として、地域医療構想の確実な実施を促進するために都道府県の権限を強化します。国保料財政への一般会計からの繰り入れなど「法定外繰り入れ」の解消や地域別診療報酬の活用などもあります。これらを実行し、必要な病床数に対し、三三万床を削減するねらいです。
 安倍政権は社会保障削減を歳出改革の要とする一方で、削減した社会保障サービスを市場に開放し、「生産性革命」の重点分野にしようとしています。ビッグデータを活用したヘルスケア産業の育成や、介護ロボットの導入やAIによるケアプラン作成まで検討されています。

■消費税増税は必要か

 政府は、「少子高齢化で社会保障支出が増大するから、給付を削減し、負担を増やし、消費税を増税するしかない」と繰り返し説明しますが、そうでしょうか。日本の社会保障支出は、諸外国と比べて多いとは言えません。二〇一五年現在の社会保障支出の対GDP比は、日本は二二・一九%(国立社会保障・人口問題研究所)。米国は日本より低く一九・一二%ですが、イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランスは、いずれも日本を上回っています(図1)。
 安倍政権は一二年の発足以降、大企業への減税を続けています。法人実効税率は一二年度の三七%から一八年度には二九・七四%まで下げました。その結果、大企業の内部留保は一二年から一・二八倍に増え、四二五兆円を超えています。一方、「企業が潤えば労働者にも行き渡る」との説明とは裏腹に、労働者の賃金は横ばいのまま(図2)。この間に消費税の八%への増税もあり、消費支出(二人以上の世帯)は一二年の三六〇万円から一八年には三四一・七万円へ一八万円以上も減額しています。
 消費税増税でさらなる国民負担を強いるより、大企業に応分の税負担を求めることが先決です。


財政制度審議会「建議」(抜粋)

社会保障

1.医療・介護
(視点1)制度の持続可能性を踏まえた保険給付範囲とする
薬剤自己負担引き上げ、受診時定額負担導入、ケアプランの利用者負担導入、軽度者への生活援助サービス等を地域支援事業へ移行
(視点2)必要な保険給付をできるだけ効率的に提供する
診療報酬抑制と政策効果の検証、薬価制度の抜本改革、調剤報酬の改革、多床室室料負担の見直し
地域医療構想促進、法定外繰り入れ等の解消と地域別診療報酬の活用等、介護保険インセンティブの活用、頻回サービス利用の適正化
(視点3)高齢化や人口減少の中でも持続可能な制度としていく
後期高齢者の窓口負担の2割への引き上げ、現役並所得者の判定方法の見直し、介護保険の利用者負担の引き上げ、金融資産等を考慮した負担の仕組みの導入
2.年金
支給開始年齢のさらなる引き上げについて議論、高所得者の年金国庫負担相当分の給付停止、年金課税の見直し


利用者の悪化を招く計画

東京・太田病院 島田せい子さん(ケマネージャー)

 すでに要支援1・2の人が介護保険から外され、総合事業へと移行しました。デイサービスでの入浴ができなくなり、「辛い」という声が多く寄せられています。総合事業を担う地域の受け皿も足りておらず、介護事業所が赤字覚悟で受け入れているのが現状です。
 前提として、介護認定が実際より軽く出る傾向にある、という問題があります。そのため、区分変更の申請をする人も多く、五人に二人ぐらいいる感覚です。主治医意見書の再提出のためにお金がかかるし、認定が確定するまでは必要なサービスを我慢するか自己負担でまかなうしかなく、利用者と家族にとっては大きな負担です。
 現在、要介護1・2の人の多くは杖歩行や時々車いすを利用する状態ですが、少しよくなるとすぐ要支援になります。こうした状態の人を総合事業に移せば、サービスが減ることで状態が悪化することは明らかです。
 ケアプランの有料化(一回一四〇〇円程度)も問題です。この負担は大きい。この費用のためにサービスを減らしたり、介護認定申請をあきらめる人も出かねません。懸念しているのは、ケアマネである私たちと、利用者、その家族との関係が変化すること。お金をもらうとなれば、利用者は「お客様」になりかねず、信頼関係が築きにくくなります。ケアマネの判断基準は、専門職として「自立支援に必要なケアプラン」をつくる人ではなく、利用者や家族が望むケアプランをつくる人、になりかねません。

(民医連新聞 第1676号 2018年9月17日)