ひめは今日も旅に出る(12)「処方せんは、旅だ!」
新しい主治医は、神経難病の訪問診療を中心にされている女性医師。口は悪いが優しい先生だと紹介された。小柄で細身のどこからそのエネルギーが湧くのかと思うほどパワフル。そんな神経内科クリニックは、ラッキーなことにわが家から車で3分のご近所さんだった。
診断から半年後の2017年3月、24時間人工呼吸器装着となった。最後に呼吸筋が弱まると思っていた私には衝撃だった。痰と格闘した数日間のベッド安静生活で、QOLはガクンと落ちた。ポータブルトイレになり、リフト入浴はシャワーチェアーでシャワー浴へ。食事も口腔ケアも介助が必要に。立ち上がりも次第に困難になり、スカイリフトというリフトが手放せなくなった。訪問看護・リハビリも導入。要介護5、障害者手帳1級に。
唯一、嚥下機能の進行は遅く、美味しいものをパクパク。達者なお口で人を動かし、ますます姫度アップ。ALSから連想する痩せた身体からはほど遠く、久しぶりに会う方々から、思ったより痩せてない! と笑われるほど。
24時間人工呼吸器装着になると、進行を緩やかにする効果が期待される点滴は対象外になりわずか5クールで終了。点滴治療を唯一の希望に思っていた母はうろたえた。追い打ちをかけるように、ALSになってしまったのは運が悪いとしかいいようがない、と主治医が話した。さすが神経難病のスペシャリスト! 超越してる、紹介通りだわと私は笑った。しかし、何の治療も薬もないなんて残酷すぎると母は涙した。数日後、母は突発性難聴になった。片道40分かけて我が家に通い、夫が不在になる日中の介護を担っていた母の負担を軽減するために、ヘルパーさんの時間を増やしていった。
リハビリをしても少しずつ筋肉が減り、動かなくなっていく身体。悶々(もんもん)と過ごす中でひらめいた。ナチュラルキラー細胞活性化だ。笑いとワクワクドキドキで、免疫力をあげにあげる。
やっぱり旅だ、これっきゃない。
文●そねともこ。1974年生まれ、岡山県在住。夫・長久啓太、猫2匹と暮らす。2016年、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断をうける。
(民医連新聞 第1676号 2018年9月17日)
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