診察室から 若い研修医に教えられ
私は初期臨床研修終了後から内科病棟に勤務しています。今回はある当直帯で印象に残ったエピソードを紹介します。
当院の当直は病棟と外来に分かれ研修医を含む若手が外来、上級医が病棟を担当します。外来当直医は救急外来患者の対応、病棟当直医は救急隊からの要請の受け入れや入院患者の急変などに対応します。私も昨年度から病棟当直医を担当するようになり、決められた時間に仮眠が取れる外来当直医をうらやましく感じていました。
三月の休日に病棟当直をしていた時のこと。夕方からバタバタしながら日付も変わり午前二時頃だったでしょうか…。東京都内の救急隊から救急要請がありました。腹痛で都内の大学病院に搬送された人の転送依頼。絞扼性イレウスを発症しており緊急手術が必要な状態でしたが、外国籍で無保険のため大学病院では治療できないと拒否され、無料低額診療事業を実施している医療機関を探してすでに一〇件目とのことでした。
それまでの病棟当直の対応で十分な睡眠が取れていない状態だった私は、依頼の内容を何度も聞き直し情報を確認しました。休日の深夜、院内に外科当直医がいない状態で患者を受け入れることが本当に可能か、さまざまな思いが錯綜する中、対応困難で断るべきではないかと考えていました。
しかしその時、外来当直医であった当時一~二年目の初期研修医たちから、「この患者さんを救えるのは我々だけです。外科の先生は自分たちが説得しますから救急の受け入れをお願いします」と強く説得されました。熱いハートを持った研修医に感動すら覚えながら受け入れを承認。その後、待機の外科医の呼び出しや手術の準備まで研修医たちが率先して行い、無事手術を成功させることができました。担当した外科医も「うちの病院が診なくては」と研修医の要請に応えてくれました。
若い研修医たちが上級医である私に、我々が大事にしている医療の大切な部分を教えてくれた病棟当直となりました。
(草野賢次、埼玉協同病院)
(民医連新聞 第1675号 2018年9月3日)
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